《ウルカヌスに驚かされるヴィーナスとマルス》
- 作者
- ティントレット
- 制作年
- 1555年
- 素材
- キャンバス / 油絵具
- 寸法
- 135 × 198 cm
- 所蔵
- アルテ・ピナコテーク
- 時代
- ルネサンス
寝台に横たわる裸のヴィーナスの衣を、年老いた鍛冶の神ウルカヌスがめくり上げて調べる。机の下には兜をかぶった軍神マルスが身を潜め、小犬がそれに気づいて吠えかかる。奥の窓辺ではクピドが眠っている。
概要
《ウルカヌスに驚かされるヴィーナスとマルス》は、ヴェネツィアの画家ティントレットが1555年頃に描いた油彩の神話画である。縦135センチ、横198センチ。愛の女神ヴィーナスと軍神マルスの密会の場に、夫の鍛冶の神ウルカヌスが踏み込んだ場面を描き、ミュンヘンのアルテ・ピナコテークが所蔵する。
画面の読み解き
館の解説によれば、ティントレットは古代の神話を風刺的に誇張して描いた。裏切られた夫は不貞の証拠を探しており、やがて隠れ場所の愛人を見つけるだろう。小犬はすでにそれを見つけている。日本語版ウィキペディアによれば、ウルカヌスは寝台に平然と横たわる裸婦の姿のヴィーナスの衣を持ち上げて調べ、兜をかぶったマルスは机の下から顔を出し、吠える犬をなだめようとしている。奥の丸い鏡はマルスの磨かれた盾で、確かな証拠でありながら夫は気づいていない。窓辺のゆりかごでは、クピドが眠ったふりをしている。主題はホメロスの『オデュッセイア』とオウィディウスの『変身物語』に拠る。
技法・様式
キャンバスに油彩で描かれる。館によれば、画家はヴェネツィアで好まれた官能的な女性の裸体画をもじり、競争相手のティツィアーノに、さらには彫刻に対しても自らの腕の優位を示した。鏡はさまざまな角度からの眺めを見せ、眠るクピドはミケランジェロの彫刻を引用している。日本語版ウィキペディアによれば、人物を対角線上に置いてやや上から見下ろす構図で奥行きを強め、人形を小さな舞台に並べて配置を練ったと考えられている。ベルリンの美術館には準備素描が伝わる。フランクフルトのシュテーデル美術館も、同じ主題の習作とされる素描(ジョシュア・レノルズ旧蔵)を所蔵する。
来歴
日本語版ウィキペディアによれば、本作はかつて17世紀のイングランドの肖像画家ピーター・レリーが所有し、1682年にデヴォンシャー公爵が67ポンドで購入して、1840年まで同家にあった。館によれば、1925年にミュンヘンの肖像画家フリードリヒ・アウグスト・フォン・カウルバッハの所有から購入された。館の上階の第5室に展示されている。所蔵番号は9257。
意義
日本語版ウィキペディアによれば、制作年は1540年から1580年まで説が分かれ、一般には1550年代とされる。妻の浮気に気づきながら証拠をつかめない夫を登場させて、神話を艶笑劇の一幕のような場面に仕立てた本作は、ティントレットの独創性にあふれた神話画として知られる。