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《ヴィーナスとキューピッド》

Venus and Cupid
《ヴィーナスとキューピッド》ロレンツォ・ロット
Wikimedia Commons / メトロポリタン美術館 / CC0 拡大して見る ⌕
PLATE
作者
ロレンツォ・ロット
制作年
1520–1529年
素材
キャンバス / 油絵具
寸法
92.4 × 111.4 cm

木に掛けた赤い幕の前で、金の冠と真珠の耳飾りをつけたヴィーナスが青い布の上に横たわり、こちらを見つめる。女神が掲げた緑の冠を通して、翼のある幼いキューピッドが楽しげに女神の膝へ放尿する。

概要

《ヴィーナスとキューピッド》は、ヴェネツィア生まれの画家ロレンツォ・ロットが1520年代に描いた油彩の神話画で、ニューヨークのメトロポリタン美術館が所蔵する。館の記録では縦92.4センチ、横111.4センチのキャンバスで、所蔵番号は1986.138。1986年にチャールズ・ライツマン夫人の寄付で購入され、第608室に展示されている。右下の木の幹に「Laurent. Loto」の署名がある。

画面の読み解き

館の解説によれば、キューピッドがいたずらっぽく冠を通して母ヴィーナスに放尿しており、これは豊穣を意味するしぐさである。1987年の館の新収蔵品の解説によれば、本作は、豊穣と夫婦の貞節の象徴に囲まれた愛の女神が結婚を祝福する寓意画で、金の冠と片方の耳飾りをつけた女神は、木から吊るした鮮やかな赤い幕の前で豊かな青い布の上に横たわる。右手で掲げた冠越しにキューピッドが楽しげに女神の膝へ放尿するしぐさは、今日の目には滑稽に見えるが、ロットの同時代の人々にとって、放尿する子どもは幸運の前兆だった。冠は、館の作品頁は月桂樹、1987年の解説はミルテ(銀梅花)のものとしている。ヴィーナスの冠とヴェール、真珠の耳飾りは、16世紀のヴェネツィアの花嫁がよく身につけた品で、館は、本作がおそらく結婚を記念して描かれたと考えている。

技法・様式

1987年の解説によれば、ティツィアーノやジョルジョーネの理想化されたヴィーナスとキューピッドに比べ、ロットの絵には、生きたモデルを写したかのような生々しい直接性がある。手足を投げ出したヴィーナスの姿勢はどの古代の手本にも対応せず、白い翼と弓矢筒を備えたキューピッドも、いたずら好きの3、4歳の男の子のように見える。ヴィーナスの鋭いまなざしと、むしろ素朴な顔立ちから、館は、女神が若い花嫁の肖像である可能性を挙げる。館の作品頁は、この大胆な調子が、古代の文献の再発見もあってヨーロッパ美術で官能的な図像が広まっていたことを映しており、ロットはキューピッドがヴィーナスを目覚めさせて婚礼を見守らせる古代ローマの詩から着想を得たのだろうとしている。

来歴

1987年の解説によれば、明るい気分と豊かな色彩は、本作をロットがベルガモで制作した作品群に位置づける。各地を転々とした10年ののち、ロットは1513年から1526年までベルガモに住み、最もすぐれた祭壇画や肖像画のいくつかを描いた。寄木細工の連作の下絵で、本作に見られるような機知に富み、しばしば難解な象徴を用いて、類いまれな独創性を示したのもベルガモ時代である。本作は1986年に館が購入した。

意義

1987年の解説は、数えきれないルネサンスのヴィーナスとキューピッドの絵の中でも、これほど美しく、これほど意表をつく作品はないとする。ロットの後期の作品は厳粛な感覚と暗い色調を特徴とし、その変化は館の《ヴィチェンツァの修道士グレゴリオ・ベーロ》に表れている。館では、この敬虔な肖像と、異教的な官能にあふれた本作が並べて掛けられた。同じ画家の作品には、ロンドン・ナショナル・ギャラリーの《ルクレティアを手本とする女性の肖像》がある。