《眠るジプシー女》
- 作者
- アンリ・ルソー
- 制作年
- 1897年
- 素材
- キャンバス / 油絵具
- 寸法
- 129.5 × 200.7 cm
- 所蔵
- ニューヨーク近代美術館
- 時代
- 世紀末〜ポスト印象
- 流派
- 素朴派
満月の砂漠で、縞の衣をまとった女が杖を握ったまま眠りこんでいる。かたわらにはマンドリンと水の壺。その背後に一頭のライオンが立ち、尾を上げて、女のにおいをそっとかいでいる。
概要
《眠るジプシー女》(仏: La Bohémienne endormie)は、フランスの画家アンリ・ルソーが1897年に描いた油彩画である。縦129.5センチ、横200.7センチのキャンバスで、ニューヨーク近代美術館が所蔵する。月夜の砂漠で眠る旅の女と、そこへ通りかかったライオンを描く。1940年1月の所蔵館の報道発表は、本作を近代の大傑作の一つと呼び、構図の凝縮された力をたたえている。
画面の読み解き
画面の下半分には砂の大地が広がり、その向こうに青緑の水辺と、薄紅色の山並みが続く。暗い青の夜空には星がまたたき、右上に満月が浮かぶ。手前では、虹のような縞の長い衣をまとった女が、同じく縞の布の上に横たわり、右手に杖を握って眠っている。そばにはマンドリンと、首の細い素焼きの壺が置かれる。女の背後には、たてがみの豊かなライオンが尾を高く上げて立ち、頭を下げて女に鼻を寄せる。右下には画家の署名がある。所蔵館が Google Arts & Culture に寄せた解説は、ルソー自身の説明を引いている。「さすらいの黒人の女、マンドリン弾きが、飲み水を入れた壺をかたわらに、疲れ果てて深く眠っている。一頭のライオンがたまたま通りかかり、女のにおいをかぎつけるが、食べはしない。月の光の効果で、とても詩的だ」。
技法・様式
同じ解説によれば、パリ市の入市税の徴収員だったルソーはほぼ独学の画家で、鋭い色、幻想的な像、くっきりした輪郭という、大衆向けの版画の様式と主題に由来する描き方をした。館の教育資料は、本作で画家が色と線への鋭い感覚を働かせ、肉づけをほとんど施さずに、あらゆる形を平らな形に還元したと説明する。そのため場面全体が静まりかえり、夢のような趣を帯びる。同じ報道発表で館長アルフレッド・H・バー・ジュニアは、ルソーの素朴で子どものような想像力から、幻覚のようなグロテスクさが生まれていると述べた。
来歴
所蔵館によれば、本作は1897年のパリのアンデパンダン展に《眠るジプシー女》の題で出品された。日本語版ウィキペディア(1993年のニューヨーク近代美術館展の図録が出典)によれば、ルソーはその後、故郷ラヴァルの市長に安い値段で買い取りを求める手紙を書き、本作を風俗画として説明したが、実現しなかった。所蔵館の来歴調査によれば、展覧会のあと絵は画家の手もとに残り、やがてパリの石炭商の持ち物となって、1924年の初めまでそこにあった。同年、批評家ルイ・ヴォークセルが手に入れ、画商ダニエル=アンリ・カーンワイラーのギャルリー・シモンを経て、2月16日にニューヨークの収集家ジョン・クインが購入する。クインが7月に没すると遺産となり、1926年10月28日にパリのドルーオ競売場でアンリ・ビングが落札した。その後スイスのキュスナハトの収集家の手に渡り、1939年12月、サイモン・グッゲンハイム夫人が買い取って館に寄贈した。
意義
1940年の報道発表でバーは、本作が古典美術の愛好家、抽象画家、シュルレアリスト、そして一般の人々と、あらゆる人の関心を引く絵だと述べている。Google Arts & Culture の解説によれば、ルソーの作品は、パブロ・ピカソ、ワシリー・カンディンスキー、フリーダ・カーロら、若い世代の前衛の画家たちの心をとらえた。本作は現在、館の5階の第501室に展示されている。