《レウキッポスの娘たちの略奪》
- 作者
- ヤン・ウィルデンス 、 ピーテル・パウル・ルーベンス
- 制作年
- 1618年
- 素材
- キャンバス / 油絵具
- 寸法
- 224 × 210.5 cm
- 所蔵
- アルテ・ピナコテーク
- 時代
- バロック・ロココ
- 流派
- フランドル・バロック絵画 / バロック
栗毛の馬と白馬を従えた二人の男が、裸の娘を抱き上げて奪い去ろうとする。宙に浮いた娘は片腕を空へ伸ばし、その下では金髪のもう一人の娘がひざをついて腕を上げる。左端では翼のある幼子が馬の手綱をつかむ。
概要
《レウキッポスの娘たちの略奪》(独: Raub der Töchter des Leukippos)は、フランドルの画家ピーテル・パウル・ルーベンスが1618年頃に描いた油彩画である。縦224センチ、横210.5センチのキャンバスで、ミュンヘンのアルテ・ピナコテークが所蔵する。ギリシア神話に取材した神話画で、所蔵館は風景画家ヤン・ウィルデンスとの共作として登録している。
画面の読み解き
所蔵館の音声ガイドによれば、ギリシア神話の双子カストルとポルックスが、レウキッポス王の二人の娘ヒラエイラとフォイベを、婚礼の直前に奪う場面で、場所は愛の女神アフロディテの聖域である。左の鎧を着けた男がカストル、右の上半身裸の男がポルックスで、馬を馴らす名手だったカストルには栗毛の馬が、拳闘の名手だったポルックスには白馬が添えられる。画面の中央では、二人の男に抱き上げられた娘が宙に浮き、片腕を空へ伸ばす。その下では、金髪を編んだもう一人の娘が金色の布の上にひざをつき、ポルックスに脇を抱えられながら腕を上へ伸ばす。二の腕には宝石をはめた腕輪が光る。左上には赤いマントがひるがえり、左端では翼のある幼子が栗毛の馬の手綱をつかむ。馬の背には豹の毛皮が掛かる。右上では白馬が前脚を上げ、奥には低い地平の野と木立、雲の浮かぶ空が広がる。音声ガイドによれば、娘たちの顔からは奪われているという印象を必ずしも受けず、むしろ恥じらいながら二人に従うようにも見える。
技法・様式
キャンバスに油彩で描かれる。所蔵館によれば、ルーベンスは、多くの視点を感じさせる複雑な構図と、質感の官能的な描き分けによって、絵画が彫刻にまさることを示した。音声ガイドによれば、神話の劇的な筋と激しい場面にもかかわらず、画面にはある静けさがある。人物たちは宙に浮く娘を中心にまとまり、腕や脚や体が絡み合って、動きが互いに滑らかにつながる。舞台のように画面の手前へ押し出された人物が、画面のほとんどを埋めている。プラド美術館の百科事典によれば、ウィルデンスは1616年からルーベンスと組み、その物語画の背景の風景を数多く描いた。
来歴
所蔵館によれば、本作は1806年にデュッセルドルフの画廊から入った。額は18世紀にドイツで作られたもので、ヨーゼフ・エフナーの手になる。所蔵番号は321で、アルテ・ピナコテークの上階の第7室に展示されている。制作年は、所蔵館の目録では1618年頃、音声ガイドでは1617年とされる。
意義
所蔵館によれば、この略奪は悲劇に終わり、カストルとポルックスは追跡のなかで命を落とす。二人は双子でありながら父が違い、スパルタ王テュンダレオスの子カストルは死すべき身だったが、ユピテルの子ポルックスはそうではなかった。兄と引き離されないようにとポルックスが願い、二人はそろって星として天に置かれた。音声ガイドによれば、白馬は永遠の命を、暗い色の馬は死を表す。ルーベンスは神話の血なまぐさい復讐から離れ、その一場面だけを選んで劇的に演出し、体の見事な造形と肌の陰影、輝く色彩を見る者に味わわせている。