《プラム》
カフェの大理石の卓に肘をつき、羽根飾りの帽子の若い女性が頬杖をついて遠くを見る。桃色の服の手もとには、ブランデーに漬けたプラムの小さなグラスと、火のついていない煙草。背後には赤い長椅子が続く。
概要
《プラム》は、エドゥアール・マネが1877年頃に描いた油彩の風俗画で、ワシントン・ナショナル・ギャラリーが所蔵する。館の題は《プラム・ブランデー》。館の記録では、キャンバスに油彩で、画面は縦73.6センチ、横50.2センチ(額込みで縦87.6センチ、横64.1センチ)。所蔵番号は1971.85.1で、ポール・メロン夫妻の収集として館に入った。左下の卓の上に「manet」の署名がある。館の西館の本館階、第89室に展示されている。
画面の読み解き
縦長の画面の中ほどで、若い女性が大理石の卓に右肘をつき、頬杖をついている。白い羽根を飾った黒い縁の帽子をかぶり、桃色の服の胸もとには白い襞飾りがのぞく。卓の上には、脚の付いた小さなグラスに入ったブランデー漬けのプラムが置かれ、左手の指には火のついていない煙草がはさまれている。背後には赤い長椅子が続き、その上の壁には、金色の太い枠に囲まれた青緑の装飾が見える。卓の下からは、黒い鉄の脚がのぞく。
技法・様式
メトロポリタン美術館が本作を借りて展示した際の解説によれば、マネは近くに並んだエドガー・ドガの《アブサン》(《カフェにて》)にならい、同じカフェ「ヌーヴェル・アテーヌ」を思わせる場面に、同じモデルである女優エレン・アンドレを選んで、自分のカフェの場面を描いた。絵は一人で酒を前にした女性を中心にしており、当時の大衆的な図像では、そうした姿はしばしば道徳的なふしだらさをほのめかしたが、本作の女性が何者なのかはあいまいである。頬杖をつき、ブランデー漬けのプラムにも火のない煙草にも手をつけずに、もの思わしげに遠くを見つめる姿は、ドガの絵と同じ都会の孤独を伝えているという。
来歴
館の来歴によれば、マネは1881年頃、収集家シャルル・ドゥドンに本作を譲った。1914年にドゥドンが没すると妻が相続し、ニースで持っていたが、1919年までにパリの画商ポール・ローザンベールに売られた。その後、ニューヨーク・パリ・カンヌに住んだアーサー・サックスが、遅くとも1927年から少なくとも1948年まで持っていた。ノードラー商会を経て、1961年にポール・メロンが買い、1971年にナショナル・ギャラリーに寄贈した。
意義
館の展覧会歴によれば、本作は1880年にパリの『ラ・ヴィ・モデルヌ』誌の画廊での展覧会に出品され、画家の没後の1884年には、エコール・デ・ボザールのマネ回顧展にも並んだ。1932年のパリ・オランジュリー美術館のマネ展、1983年のパリのグラン・パレとニューヨークのメトロポリタン美術館での展覧会をはじめ、各地のマネ展や印象派の展覧会にたびたび貸し出されてきた。2011年には、ヒューストン・東京・京都を巡った展覧会で日本でも公開されている。