《天の川の起源》
- 作者
- ティントレット
- 制作年
- 1575年
- 素材
- キャンバス / 油絵具
- 寸法
- 149.4 × 168 cm
- 所蔵
- ロンドン・ナショナル・ギャラリー (NG1313)
- 時代
- ルネサンス
雲の上の寝台で、裸身のユノが驚いたように身をのけぞらせる。空から舞い降りたユピテルが赤子を彼女の胸に当て、ほとばしる乳が上へ昇って星に変わる。まわりには弓や網を持つ幼子たちが飛び交い、右には孔雀と、雷をつかんだ鷲がいる。
概要
《天の川の起源》は、ヴェネツィアの画家ティントレットが1575年ごろに描いた油彩の神話画である。縦149.4センチ、横168センチのキャンバスで、ロンドン・ナショナル・ギャラリーが所蔵する。所蔵館によれば、18世紀には《ヘラクレスの授乳》と呼ばれていた。
画面の読み解き
所蔵館によれば、ユピテルは人間の女アルクメネとのあいだに生まれた赤子ヘラクレスを不死にしようと、眠っている妻ユノの胸に赤子を当てて乳を飲ませた。目覚めたユノから上へほとばしった乳が天の川となり、下へ落ちた乳は百合になった。ユノには持物の孔雀が添えられ、ユピテルは雷をつかんだ鷲で示される。右中ほどの雲は、天の川のかすみを思わせる。
技法・様式
キャンバスに油彩で描かれる。所蔵館によれば、乳が地に落ちて白い百合が生まれたという話は、ビザンツの農書『ゲオポニカ』にあり、1542年と1549年にヴェネツィアでイタリア語訳が出版されていた。ティントレットはおそらくこの版を知っていた。画面は1727年より前に下の約3分の1が切り取られている。17世紀の縮小された模写から、失われた部分には、ユノとユピテルの母で大地の擬人像であるオプスが水辺に横たわり、大きな白い花のそばで指先から根や芽を伸ばしていたことがわかる。
来歴
所蔵館によれば、本作はおそらく神聖ローマ皇帝ルドルフ2世とセニュレ侯の収集を経て、1724年までにフランス摂政オルレアン公の収集に入った。1798年12月26日のロンドンでのオルレアン・コレクションの売り立てで画商ブライアンが買い、おそらくダーンリー伯に売られた。1831年にダーンリー家の収集に記録され、1890年に同館がダーンリー伯から購入した。所蔵番号はNG1313。
意義
所蔵館によれば、同じ主題は、ティントレットのパトロンでもあった医師トンマーゾ・ランゴーネの1560年ごろのメダルの裏面にも表されている。本作はランゴーネの注文か、彼にゆかりのある作品とみられ、星と花を重んじたその学問、とりわけ長寿への関心を寓意する医術の寓意画かもしれない。