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《夢魔》

《夢魔》ヨハン・ハインリヒ・フュースリー
Wikimedia Commons / デトロイト美術館 / Public domain 拡大して見る ⌕
PLATE
作者
ヨハン・ハインリヒ・フュースリー
制作年
1781年
素材
キャンバス / 油絵具
寸法
101.7 × 127.1 cm
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白い寝間着の女が寝台からあおむけにのけぞり、腕を床へ垂らして眠る。その胸の上には毛深い小鬼がうずくまってこちらを見つめ、左の赤いカーテンの間からは、白い目の馬が首を突き出している。

概要

《夢魔》(英: The Nightmare)は、スイス生まれでロンドンで活動した画家ヨハン・ハインリヒ・フュースリーが1781年に描いた油彩画である。縦101.7センチ、横127.1センチのキャンバスで、デトロイト美術館が所蔵する。テートは、1782年に初めて公開されて以来、本作は恐怖の図像の象徴であり続けてきたとする。

画面の読み解き

寝台の上で、白い寝間着の若い女があおむけにのけぞり、頭と片腕を寝台の縁から垂らして眠っている。その胸の上には毛深い小鬼がうずくまり、頬杖をついてこちらをじっと見る。左奥の赤いカーテンの間からは、白く光る目の馬が首を突き出す。寝台からは黄色と赤の布が床へ流れ落ち、左の小卓には小瓶などが置かれている。デトロイト美術館の解説によれば、フュースリーは謎とパニックに満ちた恐ろしい情景を呼び起こしながら、そこにどこか不穏な親しみを漂わせる。描かれているのは、女が見ている悪夢そのものではなく、悪魔のような夢魔にとらえられた彼女が感じていることだという。シュテーデル美術館の解説は、ドイツ語で「アルプ」とも呼ばれる夢魔がその重みのすべてで女のみぞおちにのしかかり、言い伝えではその夢魔を乗せてくるとされる馬が、カーテン越しにのぞいているとみる。

技法・様式

キャンバスに油彩で描かれる。テートの2006年の展覧会の発表によれば、本作は民間伝承や大衆文化、医学、想像力をめぐる考え方、古典美術を取り込んで、強い緊張をはらんだ新しい種類の恐怖の図像をつくり出した。シュテーデル美術館は、フュースリーが見る者の心を揺さぶる崇高の感覚をあらゆる手段で求めたとし、古典的な歴史画とは違って、主題が画家の空想だけから生まれている点に独自の道をみる。横長の本作は、のちの縦長の版より構図がゆったりとして、色づかいも自然であるという。

来歴

シュテーデル美術館によれば、本作は1782年のロイヤル・アカデミー展に出品され、暴力と官能の入りまじった画面が通例の枠を超えて物議をかもし、繊細な人には見ないよう勧められたほどだった。フランクフルト・ゲーテハウスの目録によれば、翌1783年にはトマス・バークが版画にしている。画家は約10年後に縦長の版(1790〜1791年、フランクフルト・ゲーテハウス)を描いたほか、いくつもの版を残した。デトロイト美術館によれば、1920年代にはウィーンのジークムント・フロイトの住まいに版画が掛けられていた。所蔵番号は55.5.A。

意義

テートは本作を、1770年ごろから1830年ごろにかけてイギリス文化を席巻した、幻想と超自然を好む「ゴシック」の趣味を代表する作として、2006年の展覧会の中心に据えた。シュテーデル美術館は、この図像がいまも映画『フランケンシュタイン』や『吸血鬼』などに繰り返し現れるとし、フュースリーがどこから着想を得たのかは今日まで分かっていないと述べる。