《善き羊飼い》
- 作者
- バルトロメ・エステバン・ムリーリョ
- 制作年
- 1660年
- 素材
- キャンバス / 油絵具
- 寸法
- 123 × 101.7 cm
- 所蔵
- プラド美術館
- 時代
- バロック・ロココ
- 流派
- スペイン・バロック絵画
古代の円柱の廃墟を背に、巻き毛の幼子イエスが岩に腰掛け、羊飼いの杖を手にこちらを見つめる。桃色の衣に羊の毛皮を重ね、かたわらに立つ白い羊の肩にそっと手を置く。遠くの野には羊の群れが草をはむ。
概要
《善き羊飼い》は、スペインの画家バルトロメ・エステバン・ムリーリョが1660年頃に描いた油彩画で、マドリードのプラド美術館が所蔵する。スペイン文化省の文化交流機関アクシオン・クルトゥラル・エスパニョーラ(AC/E)によれば、縦123センチ、横101.7センチのキャンバスで、スペイン・バロックの作品である。所蔵番号はP000962。日本語版ウィキペディアによれば、信者に深く愛され、ムリーリョの作品の中でも特に親しまれてきた絵である。
画面の読み解き
日本語版ウィキペディアによれば、聖書のたとえ話に基づいて、幼いイエス・キリストを「善き羊飼い」として表している。左手に古代の円柱と崩れた軒の石が残る廃墟があり、その前の岩に、巻き毛の幼子が腰掛ける。頭にはかすかな光輪が輝き、桃色の衣に羊の毛皮を重ね、羊飼いの杖を握ってこちらを見つめる。右手は、かたわらに立つ白い羊の肩に置かれ、導かれる信者を表す羊は、信じる者が守られ、恐れることはないことを示す。古代の廃墟は、異教に対するキリスト教の勝利を象徴する。右奥の野では、羊の群れが草をはんでいる。
技法・様式
日本語版ウィキペディアによれば、構図は17世紀イタリアの版画家ステファノ・デッラ・ベッラの版画に基づく。救い主も羊も、町の子どもや身近な動物の姿で描かれ、写実の中にムリーリョならではの甘美さと気品がある。ムリーリョは子どもを優しく写実的に描くことにすぐれ、風俗画では浮浪児のたくましさを、宗教画では幼子イエスや洗礼者ヨハネの愛らしさと神々しい美しさを描いた。17世紀のスペインでは、幼子イエスへの崇敬が絵画や彫刻の大きな主題になっていた。
来歴
AC/Eによれば、本作は1744年、フェリペ5世の王妃イサベル・デ・ファルネシオが、カスティーリャ顧問会議の議長を務めた枢機卿ガスパル・デ・モリーナ・イ・オビエドの旧蔵品を、ほかの作品とともにその相続人から買い取ったものである。日本語版ウィキペディアによれば、このとき同じ館の《小鳥のいる聖家族》なども一緒に買われた。絵は《洗礼者聖ヨハネの幼子》と対にして飾れるよう大きさを広げられ、1746年にラ・グランハ・デ・サン・イルデフォンソの宮殿に置かれた。その後アランフエスの宮殿に移り、1747年と1774年の目録に記録される。1814年から1818年まではマドリードの王宮にあり、1819年にプラド美術館に入った。館では今も《洗礼者聖ヨハネの幼子》と対で展示されている。
意義
本作は、2023年から2024年にかけて、リスボンの国立古美術館に「招待作品」として貸し出された。駐ポルトガル・スペイン大使館によれば、同館で2023年11月30日に開幕した展覧会「共有されたアイデンティティ――ポルトガルにあるスペイン絵画」に合わせたもので、スペイン文化省がポルトガル各地で催す「モストラ・エスパーニャ」の一環だった。