《小鳥のいる聖家族》
- 作者
- バルトロメ・エステバン・ムリーリョ
- 制作年
- 1650年
- 素材
- キャンバス / 油絵具
- 寸法
- 144 × 188 cm
- 所蔵
- プラド美術館 (P000960)
- 時代
- バロック・ロココ
- 流派
- スペイン・バロック絵画
質素な家の中で、ヨセフの膝に寄りかかった幼子イエスが、片手に小鳥を高く掲げる。足もとでは白い小犬が後ろ足で立ち、小鳥を見上げる。左ではマリアが糸を巻く手を止めてほほえみ、右奥には大工の作業台が見える。
概要
《小鳥のいる聖家族》(西: Sagrada Familia del pajarito)は、スペインの画家バルトロメ・エステバン・ムリーリョが1650年ごろに描いた油彩画である。縦144センチ、横188センチのキャンバスで、マドリードのプラド美術館が所蔵する。同館の百科事典でエンリケ・バルディビエソは、ムリーリョの最も親しまれた作品の一つで、描かれた当初から名高かったとし、素描と筆づかい、抑えた色調、テネブリズムの照明から、1650年ごろの初期の作とみる。
画面の読み解き
同項目によれば、場面は当時のセビーリャの庶民の暮らしに取材した、つましい家庭の雰囲気を再現し、人物たちは皆で愛情のこもったひとときを分かち合う。画面の中心で注目を集めるのは幼子イエスで、おそらく父から贈られた小鳥を高く掲げ、それをじっと見上げる小犬と遊んでいる。聖ヨセフは、幼子の喜びをともにする、気づかい深く頼もしい父として描かれ、それまでの絵画にはなかったほどの存在感を与えられている。聖母は後景に退いて糸を巻き、この明るい雰囲気に加わっている。
技法・様式
キャンバスに油彩で描かれる。同項目によれば、図像は独創ではなく、ロンドン・ナショナル・ギャラリーにあるイタリアの画家フェデリコ・バロッチの同じ主題の作品を現代風にしたものである。バロッチの作品は1577年にコルネリス・コルトが版画にしており、ムリーリョはおそらくそれを知って、自分の環境に合わせて描き直した。抑えた色調と暗い背景に人物を浮かび上がらせる照明は、画家の初期の様式を示している。
来歴
同項目によれば、18世紀初めにはセビーリャのミゲル・デ・エスピノサが所有し、その後モリーナ枢機卿に贈られた。枢機卿は1744年にこれを王妃イサベル・デ・ファルネシオに売り、作品は王室の収集に入った。スペイン独立戦争のあいだに国外へ持ち出されたが、1818年に戻り、すぐにプラド美術館に入った。所蔵番号はP000960。
意義
同項目によれば、聖ヨセフに新たな重みを与えた描き方は、16世紀末から、とくにカルメル会の働きで広まったヨセフ崇敬の高まりと結びついている。マリアを主役とするスペインとセビーリャの絵画の伝統から離れ、つましくも深い家族の愛を、セビーリャの庶民の暮らしから引き出して描いた点に、本作の特色がある。