《ホノリウス帝のお気に入り》
- 作者
- ジョン・ウィリアム・ウォーターハウス
- 制作年
- 1883年
- 素材
- キャンバス / 油絵具
- 寸法
- 119.3 × 205 cm
- 所蔵
- 南オーストラリア美術館
- 時代
- 世紀末〜ポスト印象
- 流派
- ラファエル前派
大理石の宮殿の奥で、赤い衣の若い皇帝が玉座に座り、膝の皿から鳩に餌をまく。足もとの敷物には鳩やホロホロチョウが群がる。その向こうでは、書物を抱えた白い衣の重臣たちが、深く頭を下げたまま皇帝の目が向くのを待っている。
概要
《ホノリウス帝のお気に入り》(英: The Favourites of the Emperor Honorius)は、ジョン・ウィリアム・ウォーターハウスが1883年頃に描いた油彩画である。縦119.3センチ、横205センチのキャンバスで、アデレードの南オーストラリア美術館が所蔵する。所蔵館によれば、ロンドンのホランド・ロードで描かれ、1883年に南オーストラリア州政府の補助金で購入された。同館の沿革によれば、これは世界で初めて美術館がウォーターハウスの作品を収蔵した例である。古代ローマ末期を舞台にした歴史画で、政務をよそに鳥にかまける皇帝を描く。
画面の読み解き
英語版ウィキペディアが引くA. ホブソンの研究書によれば、ホノリウスは目の前の敷物の上の鳥たちに餌をやっている。敷物と皇帝の衣の暗い色が一つの場をつくり、皇帝の気を引こうとする重臣たちと付き人は、それと隔てられて淡い色の衣をまとう。画面左の玉座に赤い衣の皇帝が座り、膝の金の皿から餌をまく。鳩は玉座の飾りの上にもとまり、敷物にはホロホロチョウも歩く。右手では、書物を抱えた重臣たちが腰をかがめ、緑の幕の前で順番を待つ。柱の脇には槍を持った衛兵が立ち、足もとの香炉からは煙が立ちのぼる。
技法・様式
キャンバスに油彩で描かれる。所蔵館によれば、左下に「J.W.Waterhouse」の署名があり、年記はない。大理石の床の幾何学模様、柱、織物の旗など、古代末期の宮殿の細部を描き込み、手前の敷物と皇帝の側の暗い色と、重臣たちの白い衣とを対比させている。
来歴
所蔵館によれば、本作は1883年に南オーストラリア州政府の補助金で購入され、所蔵番号は0.52。同館の沿革によれば、1881年に開館したばかりの南オーストラリア国立美術館が、1883年に本作を手に入れた。同館はのちに、ウォーターハウスの《嫉妬に燃えるキルケ》(1892年)も購入している。
意義
英語版ウィキペディアによれば、ホノリウスは10歳で西ローマ皇帝となり、在位中(393〜423年)に帝国の領土は異民族に侵され、410年にはローマが西ゴート族に略奪された。最も無力な皇帝の一人とされる。本作は、国の政務に応じるよりも、子どもの頃からの楽しみにふける皇帝を描き、ローマが「滅びた」と聞いて、ローマという名の愛鶏のことと思い込んだというプロコピオスの逸話をほのめかしているのかもしれない。