《聖チェチリアの法悦》
- 作者
- ラファエロ・サンティ
- 制作年
- 1515–1516年
- 素材
- キャンバス(板から移し替え) / 油絵具
- 寸法
- 236 × 149 cm
- 所蔵
- ボローニャ国立絵画館
- 時代
- ルネサンス
- 流派
- 盛期ルネサンス
小さなオルガンを取り落としかけ、聖女チェチリアが天を仰ぐ。雲の上では天使たちが歌い、左右には聖パウロ、福音記者ヨハネ、聖アウグスティヌス、マグダラのマリアが立ち、足もとには壊れた楽器が散らばる。
概要
《聖チェチリアの法悦》は、イタリアの画家ラファエロ・サンティが1515年から1516年頃に描いた祭壇画で、ボローニャ国立絵画館の15室「ラファエロと中部イタリアの美術」に展示されている。館の題は「聖パウロ、福音記者聖ヨハネ、聖アウグスティヌス、マグダラのマリアのあいだの聖チェチリアの法悦」。2026年に本作を借りて展示したメトロポリタン美術館の記録では、もとは板に油彩で描かれ、のちにカンヴァスに移し替えられた。縦236センチ、横149センチで、ボローニャ国立絵画館の所蔵番号は577。
画面の読み解き
館の解説によれば、本作はラファエロの円熟期の名高い傑作で、法悦の聖チェチリアを描く。聖女は地上の快楽の象徴である携帯用のオルガンを滑り落とし、神の愛の象徴である天使の合唱に目を向ける。周りの聖人たちは神秘の体験に加わらず、そのまなざしによって、絶対の愛と地上の愛の対比を思い起こさせる。聖パウロは地面の楽器を見つめて思いにふけり、福音記者ヨハネと聖アウグスティヌスは目を見交わし、マグダラのマリアは見る者のほうを向いて神秘に立ち会うよう誘いながら、愛に駆られてキリストの足に塗った香油の壺を示す。
技法・様式
館によれば、ラファエロは人の姿を場面の中心に据え、聖堂の後陣を思わせる半円の空間に聖人たちを集め、背景の風景を小さく抑えた。手前の楽器の静物画はとりわけ独創的で、その制作は弟子で協力者のジョヴァンニ・ダ・ウーディネに任された。ローマで描かれた本作の鮮やかな様式と独創性に、エミリアの画家たちはさまざまに反応したが、その影響は17世紀に至るまでこの地方の絵画の展開を導いた。
来歴
館の解説によれば、本作はローマで描かれてボローニャに送られ、サン・ジョヴァンニ・イン・モンテ聖堂のエレナ・ドゥリオーリ・ダッローリオの一族の礼拝堂に置かれることになっていた。教養が高く信心深いエレナは、1506年から町で深く崇敬され、結婚しながら貞潔を守ったことや神秘の幻視によって、チェチリアと重ね合わされていた。最も古い典拠であるジョルジョ・ヴァザーリは、注文主を、ボローニャ滞在中にエレナを知った枢機卿ロレンツォ・プッチとしている。美術誌 Finestre sull'Arte によれば、本作は1798年のナポレオン軍による略奪でパリに運ばれ、1801年にルーヴルの修復家が絵具の層を板からカンヴァスに移し替えた。1815年にイタリアに戻った。
意義
館の解説によれば、聖女のそばで壊れて投げ出された楽器は、世俗の快楽の放棄をほのめかし、衣を閉じる高い帯は処女性を思わせる。主題はチェチリアとエレナの同一視にもとづいている。教皇の宮廷の第一の画家による、エレナの崇敬と結びついた作品がボローニャに届いたことは、教皇権の復活を支える重要な宣伝の手段だったと館は位置づけている。