《ダンディの死》
- 作者
- ニルス・ダルデル
- 制作年
- 1918年
- 素材
- キャンバス / 油絵具
- 寸法
- 140 × 180 cm
- 所蔵
- ストックホルム近代美術館
- 時代
- 20世紀
- 流派
- 表現主義
濃い青の闇を背に、緑の服の若い男が白い枕に身を沈め、伸ばした手の先に手鏡がかろうじて掛かる。周りでは友人たちが、ハンカチで目を押さえ、うつむき、布を広げて嘆いている。
概要
《ダンディの死》(瑞: Den döende dandyn)は、スウェーデンの画家ニルス・ダルデルが1918年に描いた油彩画である。縦140センチ、横180センチのキャンバスで、ストックホルム近代美術館が所蔵する。館は本作を、画家の最もよく知られた絵の一つとしている。
画面の読み解き
濃い青の背景の前で、緑の服を着た若い男が白い枕に上体をあずけて横たわり、目を閉じている。床へ伸ばした手の先には、手鏡がかろうじて掛かっている。左上では紫の上着の男がハンカチで目を押さえ、その隣で青い服の人物がうつむいて男を見下ろす。左下では赤い髪の人物がひざまずいて枕のわきに手を置き、右では橙の服の人物が、赤い花模様の裏地のついた大きな布を広げている。その背後にはヤシの葉がのぞく。ストックホルム近代美術館の解説によれば、若い男は嘆く友人たちに囲まれ、唇に苦しみの表情を浮かべている。手の鏡は、彼が最後の瞬間まで自分にとらわれていたという印象を強める。主題は一見わかりやすいが、その意味はいまも見る者をとまどわせる。館は、これが創造の条件をめぐる寓意画なのか、あるいは当時禁じられていた同性愛を表しているのか、と問いかけている。
技法・様式
キャンバスに油彩で描かれる。同館の解説によれば、色の強さと形の波打つような流れには、マティスらフランスの画家からの影響がはっきり表れている。それでもダルデルは独自の雰囲気と調子を生み出しており、悲しみが、青の移ろう背景と響きあう。スウェーデン人名事典(SBL)は本作を、色彩に輝き、見事に構成された群像とし、苦しみと倦怠の痛ましい表情を浮かべた若い男が、友人たちの輪の中で息絶えて崩れ落ちると記す。そして、ダルデルにしばしばみられるように、形の優雅さが奇妙で、ときに人をとまどわせる効果を生んでいるという。
来歴
大阪大学の梅谷綾の論考によれば、ダルデルは日本への旅から戻った1918年、ストックホルムにアトリエを借り、同年4月に初めての個展を開いて注目を集めた。本作は《シベリア鉄道》とともに、この年に描かれた。スウェーデン公共放送(SVT)の報道によれば、画家は先に描いた同じ題の水彩をもとに、この油彩を仕上げた。1980年代半ばに収集家フレドリク・ルースが340万クローナで買い、1988年、ルンドの金融家ハンス・トゥーリンに1300万クローナで売った。トゥーリンの破産後は金融家トマス・フィッシャーの手に渡り、1993年、1980年代に同館の館長を務めたオッレ・グラナートの尽力で、ストックホルム近代美術館が購入した。所蔵番号はMOM 604。
意義
SBLは本作を、ダルデルの絵のうち最も大きな注目を集めたものの一つに数える。ストックホルム近代美術館が2014年に開いた回顧展「ニルス・ダルデルと近代」でも、《風変わりな婦人を訪ねて》(1921年)などとともに代表作として展示された。SVTによれば、本作は1980年代のスウェーデンの金融界で一種のトロフィーとなった。グラナートは、本作が神話のような地位を得ていると語っている。