《一杯のお茶》
- 作者
- メアリー・カサット
- 制作年
- 1880–1881年
- 素材
- キャンバス / 油絵具
- 寸法
- 92.4 × 65.4 cm
- 所蔵
- メトロポリタン美術館
- 時代
- 写実・印象派
- 流派
- 印象派
縞模様の深い肘掛け椅子に、桃色の帽子と服の女性が横向きに腰掛ける。白い長手袋の両手で金縁の茶碗と受け皿を持ち、首もとには白い毛皮。背後の緑の鉢には、白や紫の花が咲いている。
概要
《一杯のお茶》は、アメリカの画家メアリー・カサットが1880年から1881年頃にパリで描いた油彩の風俗画で、ニューヨークのメトロポリタン美術館が所蔵する。館の記録では縦92.4センチ、横65.4センチのキャンバスで、所蔵番号は22.16.17。左下に「Mary Cassatt」の署名がある。2026年10月時点では展示されていない。
画面の読み解き
館の解説によれば、午後のお茶は、中流の上の階層の女性たちにとって社交の儀式だった。日常のありふれた出来事を描くことに打ち込んだカサットは、外国暮らしが10年近くになった1880年頃、この儀式を主題に何点もの作品を描いた。本作のモデルは姉のリディアで、1877年に両親とともにパリに移り住み、たびたびカサットのためにポーズをとった。画面では、桃色の帽子と服のリディアが、縞模様の深い肘掛け椅子に横向きに腰掛け、白い長手袋の手で金縁の茶碗を持つ。背後の緑の鉢には、白や紫の花が咲いている。
技法・様式
館によれば、きらめくような筆づかい、明るい色調、補色どうしの対比の強調に、カサットがフランスの印象派を受け入れたことが表れている。館の2009年の展覧会図録『アメリカン・ストーリーズ』は、同じ頃の《馬車を御する女と少女》よりもさらに徹底して印象派の手法を用いた作品とし、左右非対称の構図に加え、生き生きとした筆触、塗り残したキャンバスの地、色相環で向かい合う補色にもとづく明るいパレットによって、その場の自然さを強めていると述べる。
来歴
図録によれば、カサットは本作を《茶(Le Thé)》の題で、ほかの10点とともに1881年の印象派展に出品した。館によれば、絵は批評家に称賛され、図録は批評家で小説家のジョリス=カルル・ユイスマンスが、フランスの画家の誰もなしえなかったほどに、家庭の室内の喜ばしい安らぎと穏やかな親しさを表していると彼女を称えたことを紹介している。その後、銀行家ジェームズ・スティルマンの収集に入り、1922年に息子のアーネスト・G・スティルマン博士が館に寄贈した。
意義
館によれば、本作はお茶の時間を描いたカサットの一連の作品の一つで、1881年の印象派展で評価を得た。館には、同じお茶の主題で母のいとこを描いた《お茶のテーブルの婦人》(1883〜1885年)もある。同じ時期のカサットの作品に、《桟敷席の真珠の首飾りをした女性》(1879年)がある。