《チェスをする人々》
- 作者
- トマス・エイキンズ
- 制作年
- 1876年
- 素材
- 板 / 油絵具
- 寸法
- 29.8 × 42.6 cm
- 所蔵
- メトロポリタン美術館
- 時代
- 写実・印象派
- 流派
- 写実主義
木の壁に囲まれた薄暗い居間で、二人の年配の男がチェス盤をはさんで向き合い、そのあいだに立つ白髪の男が盤をのぞき込む。手前の小卓にはワインの瓶とグラス、床の赤い絨毯の上には猫が一匹。奥の暖炉の上には時計と額絵が掛かる。
概要
《チェスをする人々》(英: The Chess Players)は、アメリカの画家トマス・エイキンズが1876年に描いた油彩画である。縦29.8センチ、横42.6センチの小さな板絵で、画家の父が見守るなか、二人の友人がチェスを指す場面を描く風俗画である。メトロポリタン美術館が所蔵し、館によれば、存命の画家からの寄贈として館が初めて受け入れた作品である。
画面の読み解き
所蔵館によれば、場面はフィラデルフィアの家の、ルネサンス・リヴァイヴァル様式の居間である。館の紀要に載った美術史家ハウプトマンの2012年の論文によれば、左で白を持つのはフランス生まれの教師ベルトラン・ガルデル、右で黒を持つのは風景画家で素描の教師ジョージ・W・ホームズで、あいだに立って盤を見つめるのが画家の父ベンジャミン・エイキンズである。論文は、部屋をガルデルの居間とみなし、水たばこの器や、1時12分を指す第二帝政様式の時計、地球儀、ワインとグラスの載った小卓などを読み解いている。暖炉の上には、画家のフランスでの師ジャン=レオン・ジェロームの絵の複製が掛かる。
技法・様式
板に油彩で描かれる。所蔵館によれば、エイキンズはジェロームの学院流の方法に従って、空間を注意深く組み立て、細部を精密に描いた。チェス台の引き出しには、父に敬意を表して「ベンジャミン・エイキンズの息子が76年に描いた」というラテン語の銘が小さく記されている。ハウプトマンによれば、盤上の駒の配置は判読できるほど正確に描かれ、実際の一局の、次の一手の直前の一瞬をとらえているという。
来歴
ハウプトマンによれば、エイキンズは1876年のフィラデルフィア万国博覧会に本作を出品し、その後は父の所蔵として、1877年のペンシルヴェニア美術アカデミー、1878年のナショナル・アカデミー・オブ・デザインとブルックリン美術協会の展覧会に出した。1881年に画家自身が館に寄贈した。所蔵番号は81.14。現在はアメリカン・ウィングの730室に展示されている。
意義
ハウプトマンは、本作を画家のお気に入りの一点とし、これまで考えられていた以上に重要な初期作だと述べる。また、画家が父に贈った本作を、一家の友人たちが共に楽しんだ遊びの記念と読み、精神分析的な読み解きや寓意的な解釈は画面が示す以上のことを語っていると退けている。