《トランプ詐欺師》
- 作者
- カラヴァッジョ
- 制作年
- 1596–1597年
- 素材
- キャンバス / 油絵具
- 寸法
- 94.2 × 130.9 cm
- 所蔵
- キンベル美術館
- 時代
- バロック・ロココ
- 流派
- イタリア・バロック絵画
卓を挟んで、黒いビロードの服の若者が手札に見入る。その肩越しに羽根飾りの帽子の男がのぞき込み、指先の破れた手袋の手で合図を送る。手前の相棒は、背中に回した手で腰に隠した札を抜き取ろうとしている。
概要
《トランプ詐欺師》(英: The Cardsharps)は、カラヴァッジョが1596年から1597年頃に描いた油彩画である。縦94.2センチ、横130.9センチのキャンバスで、アメリカ・テキサス州フォートワースのキンベル美術館が所蔵する。《いかさま師》の名でも知られる。所蔵館によれば、ポーカーの先祖にあたる「プリメーロ」というカード遊びで、世間知らずの若者がだまされる場面を描く。本作を買い上げたフランチェスコ・マリア・デル・モンテ枢機卿は、若い画家をローマの教会社会の上層に引き合わせ、画家の出世の糸口となった。イタリア・バロック絵画を切り開く画家の、初期の傑作である。
画面の読み解き
赤い敷物を掛けた卓の左で、黒いビロードの服にレースの襟と袖口をつけた若者が、手札に目を落としている。その背後から、羽根飾りのついた帽子に縞の袖の年上の男が身を乗り出して札をのぞき、手袋をはめた手の2本の指を立てて、若者の向かいに座る相棒に合図を送る。所蔵館によれば、手袋は指先が破れていて、印をつけた札を指で探りやすくなっている。右手前では、黄と黒の縞の上着を着た若い相棒が、背中に回した手で、腰のベルトに差し込んだ札を抜き取ろうとしている。腰には短剣を下げる。卓の左端にはバックギャモンの盤が置かれている。
技法・様式
暗い背景の前に、三人の上半身を等身大に近い大きさで並べ、明るい光が顔と手、衣服の質感を浮かび上がらせる。ビロードの光沢、レース、縞の布、羽根飾りなど、衣服の素材は一つひとつ描き分けられている。1600年前後から見られるテネブリズムの強い明暗はまだなく、背景の壁にも光が回っている。所蔵館は、本作の劇的な演出と心理の駆け引きを強調している。三人の視線と手の動きは、何も知らない若者と、それを取り巻く二人の企みという関係を一目で伝える。
来歴
所蔵館によれば、本作はまずローマのマダマ宮に住むデル・モンテ枢機卿が所有し、1628年に枢機卿アントニオ・バルベリーニが買い取った。以後バルベリーニ家に伝わり、1812年には一族のマッフェオ・バルベリーニ・コロンナ・ディ・シャッラ、第7代カルボニャーノ公に分けられた。その後、行方がわからなくなって約90年がたった1987年、ヨーロッパの個人の収集の中から再発見され、同じ年にキンベル美術財団が購入した。所蔵番号AP 1987.06。現在はルイス・カーン設計の本館の南ギャラリーに展示されている。
意義
所蔵館によれば、本作は、ヨーロッパ各地の画家たちに、同じ主題を扱った無数の絵を生み出させた。その一つが、同じくキンベル美術館にあるジョルジュ・ド・ラ・トゥールの《クラブのエースを持ついかさま師》で、若者が賭けでだまされるという筋立てが、30年以上のちのフランスでも受け継がれている。