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《オルガス伯の埋葬》

El entierro del señor de Orgaz
《オルガス伯の埋葬》エル・グレコ
Wikimedia Commons / サント・トメ教会 / Public domain 拡大して見る ⌕
PLATE
作者
エル・グレコ
制作年
1586–1588年
素材
キャンバス / 油絵具
寸法
480 × 360 cm
所蔵
サント・トメ教会 (制作当初からの礼拝堂に掲げられている)
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エル・グレコが1586〜1588年、トレドのサント・トメ教会のために描いた大作。14世紀の領主の葬儀に二人の聖人が天から降りたという伝説を、名士が並ぶ地上と魂を迎える天上の二層で描いた、画家の最高傑作とされる作品である。

概要

《オルガス伯の埋葬》(西: El entierro del señor de Orgaz)は、エル・グレコが1586〜1588年に描いた油彩画である。高さ4.8メートル、上部がアーチ形の画面に、14世紀のトレドで起きたと伝えられる奇跡を描く。下半分では二人の聖人が甲冑姿の遺体を墓に納め、上半分では天が開いて魂が迎えられる。マニエリスムの画家エル・グレコの代表作で、描かれた当初からの場所であるサント・トメ教会の礼拝堂に今も掲げられている。

来歴

主題のゴンサロ・ルイス・デ・トレドは、オルガスの領主でカスティーリャの公証長官を務め、サント・トメ教会の再建にも私財を投じた人物である。1323年に没し、1327年に教会の礼拝堂へ改葬される際、聖ステファノと聖アウグスティヌスが天から降り、自らの手で遺体を墓に納めたと伝えられる。日本語では「伯」と呼ばれるが、伯爵の位はのちに子孫に与えられたものである。

1586年3月、教会の主任司祭アンドレス・ヌニェスがエル・グレコと契約を結び、図像の細部まで指定して制作を依頼した。作品は1588年春までに完成したが、報酬をめぐって教会と画家の間で長い争いとなり、画家は最終的に、低いほうだった最初の鑑定額13,200レアルを受け入れた。完成直後から、トレドの名士の姿を写した絵をひと目見ようと、人々が教会に押し寄せたという。

画面の読み解き

画面は雲の帯を境に、地上と天上に分かれる。下半分では、金の刺繍の祭服をまとった若い聖ステファノと、司教冠をかぶった老いた聖アウグスティヌスが、甲冑姿の伯の遺体を抱えて墓へ下ろす。聖ステファノの祭服の裾には、彼自身が石打ちで殉教する場面が刺繍として描き込まれている。背後には、白い襞襟をつけた黒衣のトレドの名士たちが一列に並び、奇跡に立ち会う。左端で場面を指さす少年は画家の息子ホルヘ・マヌエルで、ポケットのハンカチには画家の署名と、息子の生まれた1578年の年記がある。右端で本を読む司祭は注文主のヌニェスとされ、名士の列の中ほどでこちらを見つめる男は、画家の自画像とされる。

上半分では、白い衣のキリストを頂点に、左に聖母マリア、右に洗礼者ヨハネがとりなしの姿勢をとる。中央では天使が、伯の魂を小さな透けるような姿で抱え、雲の狭い裂け目を通って天へ運び上げる。周りには鍵を持つ聖ペテロや、ダビデ、モーセ、ノアら旧約の人物、さらに当時存命だったスペイン王フェリペ2世の姿もある。地上の人物が現実の比率で描かれるのに対し、天上の人物は細長く引き伸ばされ、氷のような雲が渦を巻く。現実と幻視を一つの画面に重ね、死が天への旅立ちであることを示している。

技法・様式

キャンバスに油彩で描かれている。黒い喪服の列に金の祭服が映え、儀式の荘厳さを生む。天上でキリストの左右に聖母と洗礼者ヨハネを配する構図は、東方正教会のイコンで伝統的なデイシスの型で、クレタ島でイコン画家として出発したエル・グレコの出自をうかがわせる。

ヴェネツィアで学んだ豊かな色彩と、ローマで吸収したマニエリスムの引き伸ばされた人体、そしてイコンの伝統が一つの画面にまとめられている。トレドに移って約10年、画家が初めて完全に自分の様式を示した作品とされ、ここから成熟期の作風が始まる。

意義

エル・グレコの評価は没後に下がったが、19世紀から20世紀初めにかけて再発見され、作家サマセット・モームは本作を「世界で最も偉大な絵の一つ」と呼んだ。地上の写実と天上の幻視を一つに結ぶ構成は、画家の到達点として名高い。1588年から400年以上、描かれた礼拝堂の同じ壁に掲げられ、下の壁には奇跡を記したラテン語の墓碑銘がはめ込まれている。注文された場所で、注文された意味のまま見られることも、この絵の大きな魅力である。