《ホルヘ・マヌエル・テオトコプリの肖像》
黒い胴衣に大きな白いひだ襟を着けた若い男が、暗い背景の前で振り向くようにこちらを見る。右手に細い絵筆を持ち、左手には絵筆の束とパレットを抱える。背景の右には筆記体のギリシア文字が見える。
概要
《ホルヘ・マヌエル・テオトコプリの肖像》は、エル・グレコが1600年から1605年頃に描いた肖像画で、セビーリャ美術館が所蔵する。縦74センチ、横51.5センチのキャンバスに油彩で描かれている。モデルは画家の息子ホルヘ・マヌエル・テオトコプリで、館は本作を、画家のもっとも重要な肖像画の一つに数えている。
画面の読み解き
館が Google Arts & Culture に寄せた解説によれば、息子は当時のスペインの、重々しく優雅な流行にならった装いで描かれている。黒い胴衣を着け、筒状に糊づけした大きなひだ襟の上で、頭を威厳をもってまっすぐに保つ。像は無地の背景から浮かび上がり、腕の置き方と、絵筆を扱う手の気品ある仕草、パレットと絵筆の束を支える優雅な姿勢が目を引く。館は、これらが絵画の芸術を格調高いものとし、絵画が紳士のたしなむ高貴な技芸であることを伝えている、と述べる。
技法・様式
同じ解説によれば、エル・グレコはここで、身ぶりの優雅な抑制と表情の生き生きとした力を一つに溶け合わせている。知的な人物の肖像であると同時に、ある社会的な地位を代表する姿としても描き出した。背景の右には、筆記体のギリシア文字の書き込みが見える。
来歴
『ラボラトリオ・デ・アルテ』誌に載ったテオドロ・ファルコン・マルケスの論文(1990年)によれば、本作は19世紀後半、セビーリャのサン・テルモ宮殿に住んだモンパンシエ公爵夫妻の収集にあった。夫妻が買い足したスペイン絵画の一つで、のちにセビーリャの美術アカデミーに寄贈され、その「絵画美術館」で展示された。
意義
館の解説によれば、ホルヘ・マヌエルは1578年にトレドで生まれた建築家・彫刻家・画家で、16世紀の最後の数年に父の仕事を手伝い始めた。本作はその時期に描かれたとみられる。2019年にパリのグラン・パレで開かれたエル・グレコ展の教育用資料は、工房を説明する図版に本作を載せている。それによれば、父に学んだ彼は1607年から工房で重きをなし、父の没後に工房を継いだ。館は、本作がルツェルンのローゼンガルト・コレクション美術館にあるピカソの作品の手本になったことも伝えている。同じ画家の肖像画には、《胸に手を置く騎士》や《修道士オルテンシオ・フェリス・パラビシーノの肖像》がある。