クレジット方針 収録範囲について お問い合わせ
作品COLLECTION 画家ARTISTS 流派MOVEMENTS 時代PERIODS 所蔵MUSEUMS 様式史HISTORY 用語集GLOSSARY 検索SEARCH

《青衣の少年》

The Blue Boy
《青衣の少年》トマス・ゲインズバラ
Wikimedia Commons / ハンティントン・ライブラリー / Public domain 拡大して見る ⌕
PLATE
作者
トマス・ゲインズバラ
制作年
1770年
素材
キャンバス / 油絵具
寸法
179.4 × 123.8 cm
流派
ロココ
広告

嵐の気配の空と暗い木立を背に、青いサテンの衣装の少年が正面を向いて立つ。右手に羽根飾りのついた黒い帽子を下げ、左手を腰に当てて、まっすぐこちらを見つめている。

概要

《青衣の少年》(英: The Blue Boy)は、トマス・ゲインズバラが1770年に描いた油彩画である。縦179.4センチ、横123.8センチ。アメリカ・カリフォルニア州サンマリノのハンティントン・ライブラリーが所蔵する。青いサテンの衣装をまとった少年を、森の斜面に立つ等身大の全身像で描いた肖像画で、同年のロイヤル・アカデミー展に出品されて画家の名声を高めた。ロココの時代の軽やかな筆づかいをよく示す、18世紀イギリス美術を代表する作品の一つである。

画面の読み解き

嵐の気配を帯びた雲の空と、暗い木立の茂る斜面を背に、長い髪の少年が正面を向いて立つ。まっすぐにこちらを見つめ、右手には白い羽根飾りのついた黒い帽子を下げ、左手を腰に当てて、肩から青い外套を垂らしている。衣装は、袖に切れ込みを入れて白い下地をのぞかせた胴衣と膝丈の半ズボンで、襟と袖口をレースが飾り、靴には青いリボンがつく。衣の青は、光を受けたところでは白く輝き、陰では深い藍色に沈む。左の遠くには、低い地平線に夕暮れの光がのぞく。

技法・様式

所蔵館によれば、少年の衣装は膝丈の半ズボンと、切れ込みのある胴衣にレースの襟を合わせた17世紀の服装で、ヴァン・ダイクが描いた貴族の肖像画にならったものである。1770年のロイヤル・アカデミー展では、このヴァン・ダイクへの目配せが二人の画家の比較を呼んだ。輝くサテンの青にはウルトラマリン、スマルト、プルシアンブルー、おそらくアズライトまでの顔料が使われ、勢いのある筆の払いと細かな筆触で描き分けられている。2018〜2019年の調査と修復でデジタルX線写真を撮ったところ、画面の上部中央に別の男性の頭部が見つかり、画家が描きかけの肖像の画布を使い回したことがわかった。右下には、かつて描かれていた犬が塗り消されていた。

来歴

モデルは、所蔵館の作品記録ではジョナサン・バトール(1752〜1805年)とされるが、所蔵館が2022年に公開した記事は、画家の甥ゲインズバラ・デュポンをモデルとする見方を紹介している。1921年、鉄道と不動産で財をなしたアメリカの実業家ヘンリー・E・ハンティントンが、画商ジョゼフ・デュヴィーンを通じてウェストミンスター公爵から購入した。翌1922年1月、ロンドンのナショナル・ギャラリーで3週間の告別展示が行われて約9万人が訪れ、館長は木枠に「Au revoir(さようなら、また会う日まで)」と書き残した。作品は1月25日にイギリスを離れた。所蔵番号21.1。

意義

ちょうど100年後の2022年1月25日から5月15日まで、作品はナショナル・ギャラリーに貸し出され、ヴァン・ダイクがゲインズバラに与えた影響を示す展示で里帰りを果たした。アメリカでは、1927年に同館に入ったトマス・ローレンスの《ピンキー》と対の名品として親しまれ、映画やテレビ番組にも繰り返し登場して、イギリス美術で最も広く知られた肖像画の一つとなっている。