《洗礼者聖ヨハネの祭壇画》
三つのアーチの門の奥に、洗礼者ヨハネの生涯が描かれる。左では生まれた子を抱く聖母の前で父ザカリアが名を書き、中央ではヨルダン川に立つキリストにヨハネが洗礼を授け、右ではサロメが斬られた首を受け取る。
概要
《洗礼者聖ヨハネの祭壇画》は、ネーデルラントの画家ロヒール・ファン・デル・ウェイデンが1455年頃に描いた三枚の板からなる油彩の祭壇画で、ベルリン絵画館が所蔵する。館の記録では、オーク材の板に描かれ、画面は各縦78.7センチ、横49.2センチ。所蔵番号は534Bで、制作地はブリュッセルとされる。館によれば、祭壇画の基本の構成は、同じく館が所蔵する画家の《ミラフロレスの祭壇画》を受け継いでいる。三つの場面は洗礼者ヨハネの誕生と命名、キリストの洗礼、ヨハネの斬首で、それぞれ彫刻で飾ったアーチの門の向こうに描かれる。
画面の読み解き
館の解説によれば、左の板の手前では、聖母が生まれたばかりのヨハネを腕に抱き、向かいの腰掛けに座るザカリアが、天使に告げられた子の名を書きつける。子の誕生を信じなかったために口がきけなくなっていたザカリアは、名を書いたとき再び話せるようになった。奥には梁の天井と暖炉のある産室が開け、天蓋つきの寝台にエリサベトが休む。中央の板の中心はキリストの洗礼で、正面を向いたキリストは膝まで川に浸かり、その横でヨハネが洗礼を授ける。右手前には天使がひざまずいてキリストの衣を用意し、頭上には聖霊の鳩が舞い、空には父なる神が現れて「これはわたしの愛する子」という言葉を告げる。右の板はヨハネの斬首で、手前では豪華な衣のサロメが首切り役人から首を受け取る。二人はわざと目をそらし、その行いのおぞましさが明らかになる。役人の足もとには、両手を縛られたヨハネの体が倒れている。奥の宴の間では、サロメが母ヘロディアに盆の首を差し出し、ヘロディアは激しい怒りのあまりその首にナイフを突き立てる。
技法・様式
館によれば、三つの門の両側の壁には十二使徒の像が並び、アーチの内側の浮き彫りにはキリストとヨハネの生涯の場面が刻まれている。左の門のアーチには、天使がザカリアに子の誕生を告げる場面から、聖母の結婚、受胎告知、訪問、キリストの降誕までが表される。中央の門のアーチは、ヨハネが荒れ野へ向かい、悔い改めを説き、キリストが悪魔に三度試される場面を示す。右の門のアーチの最後の浮き彫りはサロメの踊りで、すぐ前の斬首の場面へとつながる。こうして主な三場面は、同じ時のキリストの出来事と結びつけられ、救いの歴史全体の中に置かれている。
来歴
館の記録によれば、1850年に、オランダ国王ウィレム2世の収集の売り立てで二枚が、イギリスでもう一枚が買い取られた。こうして三枚がそろって館に入った。
意義
館の解説によれば、中央のキリストの洗礼は、救いの歴史の上で最も大切な出来事として祭壇画の中心に置かれている。ヨハネの誕生と死の場面にキリストの生涯の出来事を重ねることで、洗礼者ヨハネの歩みと生涯が、主イエスのそれといかに深く結びついているかがはっきりと示されている。