《黄金の子牛の礼拝》
金色の空の下、台座の上の黄金の牛の像を、色とりどりの衣のイスラエルの民が囲む。白い衣の祭司が像を指し、手前では男女が手をつないで踊る。左上の暗い岩山からは、石板を掲げた男が駆け下りてくる。
概要
《黄金の子牛の礼拝》(英: The Adoration of the Golden Calf)は、フランスの画家ニコラ・プッサンが1633年から1634年にかけて描いた油彩画である。縦153.4センチ、横211.8センチのキャンバスで、ロンドン・ナショナル・ギャラリーが所蔵する。旧約聖書『出エジプト記』の場面を、古典主義の構図で描いた歴史画である。
画面の読み解き
館の解説によれば、イスラエルの民の大きな群れが、等身大の黄金の子牛、実際にはエジプトの牛の神アピスを表す牡牛の像を拝んでいる。指導者モーセが、神が十戒を記した石板を受け取りにシナイ山へ行っている間に、民は異教の神を拝むことにしたのである。白い衣のアロンは、金の耳飾りを溶かして像を造った。左上の隅では、モーセが後継者ヨシュアとともに戻り、子牛を見た怒りから石板を打ち砕く。右では、ひざまずいた人々が祭壇を見つめて指さし、左では人々が踊る。白い花を持つ踊り子が二つの群れを手でつなぎ、右のテントは、人々が遠くからこの聖所に来たことを示す。
技法・様式
キャンバスに油彩で描かれる。館によれば、たくましい体、流れる衣、フリーズのように並ぶ踊り手は古代彫刻に、異教の祭りの踊り手の群れは古代ギリシアの壺絵に学んでいる。大胆な色の衣と金色の空には、ティツィアーノやベッリーニら16世紀のヴェネツィアの画家の影響が表れる。モーセとヨシュア、手前の人々の配置は、ラファエロとその工房が1518〜1519年頃にヴァティカン宮殿のロッジアに描いた同じ主題のフレスコに似ている。強い光がこちら側から差し、テントの前の老人は目を手で覆う。
来歴
館によれば、本作は対作《紅海渡渉》とともに、トリノの収集家アメデオ・ダル・ポッツォのために描かれた。1680年頃にフランスへ渡り、ロレーヌ騎士、セニュレー侯爵らの手を経て、1741年にイギリスのヤコブ・デ・ブーヴェリーに買われ、ロングフォード城に伝わった。1945年、第7代ラドナー伯爵から、アート・ファンドの援助を得て館が購入した。所蔵番号はNG5597。いまは第29室に展示されている。
意義
館によれば、礼拝する人々は勢いよく踊り、見る者は画面を横切って指さす手を追うことで物語を読みとる。手前の人々の群れは、プッサンがそれより前に描いた館の《ヘルメス柱の前のバッカナール》の異教の祭りの場面に、左右を反転させた形で現れる。対作の《紅海渡渉》は、いまメルボルンのヴィクトリア国立美術館にある。館は2021年から2022年にかけて、ゲティ美術館と共同で「プッサンと踊り」展を開いた。