《スザンナと長老たち》
- 作者
- ティントレット
- 制作年
- 1555–1556年
- 素材
- キャンバス / 油絵具
- 寸法
- 146 × 193.6 cm
- 所蔵
- ウィーン美術史美術館 (GG 1530)
- 時代
- ルネサンス
薄暗い庭の水辺で、金髪のスザンナが片脚を水に浸し、立てかけた鏡に見入る。薔薇の垣の手前では老人が地面に身を伏せてのぞき、垣の向こうの端にもう一人の老人が姿を見せる。奥には明るい庭がはるかに続く。
概要
《スザンナと長老たち》は、ヴェネツィアの画家ティントレットが1555年から1556年頃に描いた油彩画で、ウィーン美術史美術館が所蔵する。縦146センチ、横193.6センチのキャンバスで、館での題は《水浴のスザンナ》。旧約聖書外典「スザンナ」の物語を描く。所蔵館の解説は、ティントレットをヴェネツィアにおけるマニエリスムのもっとも重要な画家と紹介している。
画面の読み解き
所蔵館の解説によれば、裕福なヨアキムの妻スザンナは毎日、庭で水浴していた。夫の客である二人の老人はひそかに欲情を募らせ、ある日待ち伏せて関係を迫るが、拒まれると、腹いせに彼女を姦通の罪で訴える。死刑を宣告されたスザンナを、若いダニエルが二人を別々に問いただして救った。画面では、スザンナが鏡に映る自分の姿に見入り、二人の侵入者に気づいていない。見る者だけが老人たちに気づいており、のぞき見をする立場に置かれる。
技法・様式
所蔵館によれば、場面に潜む緊張、いわば「嵐の前の静けさ」は、明と暗、すぐ目の前と遠い奥、女性のまばゆい美しさと男たちの戯画のような顔立ちといった対比で表されている。繊細な光と変化に富むキアロスクーロの中で、スザンナの美しさが前景を占める。歪んだ遠近、強い光の対比、広い庭の奥へと勢いよく退いていく空間は、マニエリスムの特徴である。
来歴
所蔵館によれば、1648年に画家・著述家カルロ・リドルフィが、ヴェネツィアの画家ニコラ・レニエの家にある本作を記録している。1677年にはヴェネツィアのジョヴァンニ・ロエッタの収集にあり、1712年より前にウィーンの画廊に入った。
意義
所蔵館の解説によれば、ティントレットはこの物語が持つ教訓を後ろへ退けている。カトリック教会の立場からは、教訓を強調することがぜひとも必要だったはずである。事情を知る者にしかわからない動物の象徴も、官能の楽しみをほとんど妨げない。左奥の鹿は情欲を、鴨は貞節を表し、スザンナの頭上の枝にとまるカササギは、まもなく彼女を襲う中傷を示している。