《春》
明るい緑の草地の木陰に、淡い桃色の服と帽子の女性が座り、膝の上の本に目を落としている。葉を透かした日の光が、白いスカートや草の上に小さな斑点となって散り、奥には日の当たる芝生が明るく広がる。
概要
《春》は、フランスの画家クロード・モネが1872年に描いた油彩画で、アメリカ合衆国ボルティモアのウォルターズ美術館が所蔵する。館の記録では、キャンバスに油彩で、縦50センチ、横65.5センチ。所蔵番号は37.11で、右下に「Claude Monet」の署名がある。パリ近郊アルジャントゥイユの庭の木陰で本を読む女性を描いた風俗画で、1876年の第2回印象派展には「読書する女」という、より一般的な題で出品された。
画面の読み解き
画面の左寄りに、淡い桃色の上着と白いスカートの若い女性が、草の上に脚を伸ばして座っている。花飾りのついた桃色の帽子をかぶり、うつむいて膝の上の本を読む。背後には木々の枝葉が茂り、葉の間から差し込む日の光が、スカートや草の上に、白や淡い桃色の小さな斑点となって散らばる。足もとの草地には小さな花が咲き、画面の右奥では、日を浴びた芝生が明るい黄緑に輝いている。
技法・様式
館の解説によれば、モネはこの絵で、人物の似姿をとらえることよりも、混ぜ合わせない色の点を並べることで、葉を透かした輝く日の光の効果をどう表せるかを探ることに関心を向けていた。女性の服の上の白い斑点や、草地に置かれた明るい色の筆触は、その試みをよく示している。館はまた、1870年代の初めにモネが自宅の裏庭の眺めをたびたび描き、そこにしばしば妻カミーユと息子ジャンを登場させたことを紹介しつつ、本作が「読書する女」という一般的な題で展示された点に触れている。
来歴
館によれば、モネは1871年12月の終わりに、パリの北西、セーヌ川右岸の郊外の町アルジャントゥイユに移った。印象派の画家たちが好んだ光景の多くがこの小さな町に見いだされ、鉄道でパリと手軽に結ばれていた。館は、ヘンリー・ウォルターズの入手以前の来歴に不確かな点があるとしている。1872年か1873年にモネが売り立てに出したのち画商ポール・デュラン=リュエルが買い、のちにエルネスト・オシュデの手に渡ったとみられる。1889年には画家メアリー・カサットが所有し、1903年5月7日、画商ジョージ・A・ルーカスを代理人として、ボルティモアの収集家ヘンリー・ウォルターズが買い取った。1931年、ウォルターズの遺贈により館の所蔵となった。
意義
館の展覧会歴によれば、本作は1876年の第2回印象派展、1889年のジョルジュ・プティ画廊でのモネとロダンの二人展に出品され、その後も1957年のセントルイスとミネアポリスのモネ展、1980年のグラン・パレの「クロード・モネ讃」展など、多くの展覧会に貸し出されてきた。同じ年に第2回印象派展に出た《散歩、日傘をさす女性》とともに、アルジャントゥイユ時代のモネが戸外の光の中の人物に取り組んだことを伝える作品である。