《修道士オルテンシオ・フェリス・パラビシーノの肖像》
鋲を打った革張りの椅子に、黒いマントと白い修道服の若い修道士が座り、黒い目でこちらを見つめる。胸には赤と青の十字。右手は肘掛けに力なく垂れ、左手は膝の上の二冊の本を押さえて、指をページの間にはさむ。
概要
《修道士オルテンシオ・フェリス・パラビシーノの肖像》(西: Fray Hortensio Félix Paravicino)は、クレタ島に生まれスペインで活動した画家エル・グレコが1609年に描いた油彩画である。縦112.1センチ、横86.1センチのキャンバスで、ボストン美術館が所蔵する。画家の親しい友で、神学者・説教家・詩人だった若い修道士を描いた肖像画である。
画面の読み解き
鋲を打った革張りの椅子に、修道士が少し斜めに身をあずけて座る。黒い髪と短いひげの細い顔に、大きな黒い目がこちらを静かに見つめる。白い修道服の上に黒いマントをはおり、胸には赤と青で描かれた十字の印がつく。右腕は肘掛けにのせて手を力なく垂らし、左手は膝の上の二冊の本を押さえて、指をページの間にはさんでいる。椅子の高い背の両端には木彫りの飾りが立つ。背景は暗い茶色の壁で、ほかに何も描かれない。館の解説によれば、エル・グレコは色を修道服の黒と白にほぼ限り、体よりも心の存在感を強く感じさせる、繊細で引きつける像をつくった。
技法・様式
キャンバスに油彩で描かれる。館によれば、画面の右中央には、ギリシア文字で「ドメニコス・テオトコプーロスが作った」と署名がある。白い修道服や襟は、素早く大きな筆づかいで光を受けた布のひだが描かれ、黒いマントの重い色面と強く対比する。館は、強い精神性をたたえた宗教画で最もよく知られるエル・グレコが、鋭く力強い肖像画家でもあったとする。
来歴
館によれば、本作は1904年、同じく偉大な肖像画家でスペイン美術を愛したジョン・シンガー・サージェントの推薦で、アイザック・スウィーツァー基金によって購入された。モデルのパラビシーノは1580年にマドリードで生まれ、1600年に三位一体修道会に入り、のちの1616年には宮廷の説教師となった。1609年の制作当時は28〜29歳の若さだった。1633年に没している。
意義
プラド美術館の百科事典によれば、エル・グレコの芸術は、ゴンゴラと並ぶ誇飾主義の詩人パラビシーノに称えられた。パラビシーノは比喩を凝らした説教と詩で知られ、絵画の目利きでもあった。同じ項は、トレドのエル・グレコが、町の学識ある知識人たちと、イタリアびいきやギリシア学の少数の友に囲まれていたとする。本作のモデルも、そうした友の一人だった。