《少女》
- 作者
- ヨハネス・フェルメール
- 制作年
- 1665–1667年
- 素材
- キャンバス / 油絵具
- 寸法
- 44.5 × 40 cm
- 所蔵
- メトロポリタン美術館
- 時代
- バロック・ロココ
- 流派
- オランダ黄金時代の絵画
黒い背景の前で、淡い色の布を肩に巻いた若い女性が振り向き、こちらにほほえむ。広い額に光が当たり、耳には小さな真珠の飾りが光る。頭から背へは黄色い布が垂れている。
概要
《少女》は、オランダの画家ヨハネス・フェルメールが1665年から1667年頃に描いた油彩画で、ニューヨークのメトロポリタン美術館が所蔵する。館の記録では、カンヴァスに描かれ、縦44.5センチ、横40センチ。所蔵番号は1979.396.1で、館の614室に展示されている。館の題は「若い女の習作」。館の所蔵品目録(ウォルター・リートケ、2007年)によれば、左上に「IVMeer」の署名があり、VとMは組み合わせ文字で書かれている。
画面の読み解き
館によれば、柔らかな光が、17世紀のオランダの人々には異国風に見えたであろう服と模造の装身具を身につけた若い女性の顔を照らしている。目録によれば、女性は光沢のある青い布をまとい、袖があるかのように見せかけている。頭にかぶっているのは一枚のスカーフにすぎず、こうした衣装は当時のデルフトの家や通りで目にするものではなかった。広く平たく見える顔立ちは、当時流行した眉を剃り生え際を上げた化粧に大きく左右されている。腕は台ではなく絵の額に置かれ、手、というより手首は、知っているものよりも見えるものを優先するフェルメールの意図的な省略の一例だという。
技法・様式
目録によれば、黄色と淡い青の布の色は、女性の肌や唇の淡い色とよく調和し、顔の光から影への緩やかな移り変わりも、布の微妙な色合いに呼応している。布の山の明るい部分は、抑えられているか、ガラスのモザイクのようにきらめき、その断続的な模様は珍しい織り地を思わせる。目録は、布の描写は脇役ではなく、目利きの目と想像力に向けられた主要な主題だとする。保存状態はよいが、女性自身から見て右の側の顔は、細かなひび割れの網目で形がやや損なわれ、肩掛けのウルトラマリンの青いグレーズはすり減っている。
来歴
館の作品頁によれば、本作は注文による肖像ではなく、興味を引く人物を、しばしば空想の衣装で描いた「トローニー」とみられる。目録の来歴によれば、本作は、デルフトの後援者ピーテル・ファン・ライフェンの娘婿ヤコプ・ディシウスの遺産が1696年にアムステルダムで競売にかけられた際の、フェルメールのトローニーの1点だった可能性がある。1816年のロッテルダムの競売を経て、1829年までにブリュッセルのアーレンベルク公の手に渡り、第一次世界大戦の勃発でドイツのメッペン城に移されて長く人目に触れなかった。1955年にチャールズ・ライツマン夫妻が32万5000ドルで買い、1979年にテオドール・ルソーを記念して館に寄贈した。
意義
目録によれば、本作は、ほぼ同じ大きさの《真珠の耳飾りの少女》(マウリッツハイス美術館)と、ワシントン・ナショナル・ギャラリーの《赤い帽子の女》と同じ時期に描かれた。光と色の点で、原色を控えめに使い明暗の対比を強めた《真珠の耳飾りの少女》とは大きく異なる。目録は、1696年の競売に記された「同じものの別の版」がこの2点のどちらかなら、主題と大きさが似て、形の性質が互いを補い合う両者は、対として描かれたのかもしれないとしている。