《髑髏を持つ若者》
- 作者
- フランス・ハルス
- 制作年
- 1626–1628年
- 素材
- キャンバス / 油絵具
- 寸法
- 92.2 × 80.8 cm
- 時代
- バロック・ロココ
- 流派
- オランダ黄金時代の絵画
大きな赤い羽根飾りの帽子をかぶった若者が、左手に髑髏を持ち、右手をこちらへ突き出して何かを語りかける。顔は正面を向きながら、目は画面の外の一点を見つめ、開いた口から言葉がこぼれそうに見える。
概要
《髑髏を持つ若者》は、オランダの画家フランス・ハルスが1626年から1628年頃に描いた油彩画である。縦92.2センチ、横80.8センチ。髑髏を手にした若者を等身大で描き、命のはかなさを示すヴァニタスの主題に属する。ロンドン・ナショナル・ギャラリーが所蔵し、館はハルスの最も魅力的な作品の一つとする。
画面の読み解き
館の解説によれば、等身大の若者が片手に髑髏を持ち、もう一方の手で身ぶりをする。間近に描かれた若者は正面を向きながら、画面の外の何かをじっと見つめる。強く短縮して描かれた右手の指は、画面からこちらの空間へ突き出してくるようだ。開いた口と手から、語り出そうとしているのか、朗唱の途中で間を置いているようにも見える。館は、この絵は肖像ではないとする。髑髏は死すべき運命の象徴で、人の命の短さを思い出させる。大きなダチョウの羽根の付いたベレー帽や布は、16世紀の服装を空想で再現したもので、画家や役者が寓意や歴史の人物を表すのに用いた。
技法・様式
キャンバスに油彩で描かれる。館によれば、本作は自由に素早く描くハルスの大胆な技法をよく示す。当時ふつうに行われた下塗りの跡は無く、布は赤みを帯びた地の上に一層で置かれ、地が透けて明暗の中間の調子をつくる。赤い羽根などは絵具が乾く前に重ねて色を混ぜ、鼻の輪郭は、乾く前の絵具をおそらく筆の柄でひっかいて描いた。髑髏は粗い線を重ねて形づくられている。館の学術目録によれば、若者の派手な衣装は、オランダのカラヴァッジョ派の画家たちが寓意画や風俗画で好んだ種類のものである。
来歴
館によれば、画家アンドルー・ゲデスがサー・ジェイムズ・スチュアートのために買い、その娘、孫たちを経て、1895年にアイルランドのカリスフォート伯が3,800ポンドで購入した。のちサー・リチャード・プロビーに伝わり、1980年に館が購入した。学術目録によれば、1636年の画家ピーテル・コッデの財産目録にハルスのヴァニタスの絵が記されているが、本作かどうかはわからない。現在は第23室に展示されている。所蔵番号はNG6458。
意義
館によれば、かつて本作は、シェイクスピアの『ハムレット』で王子が道化ヨリックの髑髏を手にする墓場の場面とされた。しかし、当時のオランダ共和国でこの劇が上演されたり訳されたりした証拠は無い。絵とシェイクスピアの場面は、同じ伝統に根ざしているという。髑髏を持つ若者の図像は、学術目録によれば少なくとも1516年のルーカス・ファン・レイデンの版画にさかのぼり、ヘンドリック・ホルツィウスの1614年の素描には「誰が逃れられようか、誰も」とラテン語で記されている。