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《ニンフとサテュロス》

Nymphs and Satyr
《ニンフとサテュロス》ウィリアム・アドルフ・ブグロー
Wikimedia Commons / クラーク美術館 / Public domain 拡大して見る ⌕
PLATE
作者
ウィリアム・アドルフ・ブグロー
制作年
1873年
素材
キャンバス / 油絵具
寸法
260.4 × 182.9 cm

森の池のほとりで、裸のニンフたちが、山羊の脚をもつサテュロスの頭や腕をつかみ、水の中へ引き込もうとしている。奥では一人のニンフが片腕を高く上げ、遠くの仲間たちに呼びかけている。

概要

《ニンフとサテュロス》(仏: Nymphes et satyre、英: Nymphs and Satyr)は、フランスの画家ウィリアム・アドルフ・ブグローが1873年に描いた油彩画である。縦260.4センチ、横182.9センチの大きなキャンバスで、アメリカ・マサチューセッツ州ウィリアムズタウンのクラーク美術館が所蔵する。ギリシア神話で森や泉に住む女の精ニンフと、半人半山羊のサテュロスを描いた神話画で、所蔵館によれば、画家は着想のもとになったラテン語の詩の一節を添えて、1873年のパリのサロンに出品した。

画面の読み解き

所蔵館によれば、三人のニンフがふざけながらサテュロスを森の池へ引きずり込もうとし、もう一人が遠くの仲間に呼びかけている。サテュロスは泳げないと言い伝えられていた。画面では、左のニンフが片手を木にかけ、もう一方の手でサテュロスの頭を押さえる。その奥で片腕を高く掲げたニンフは、もう一方の手でサテュロスの髪をつかみながら、右奥の木陰にかすかに見える仲間たちの方へ顔を向けている。サテュロスは中央のニンフへ腕を伸ばして顔を向け、青い髪紐のそのニンフはほほえみながら彼の腕に手をかける。手前では背を向けたニンフが両手でサテュロスの腕を引き、水際へ踏み出している。サテュロスの毛深い山羊の脚は水辺で踏みとどまり、足もとの水面にはスイレンが咲く。左下には画家の署名と「1873」の年記がある。

技法・様式

所蔵館は、漠然と古典に拠った主題が、女性の裸体をいくつもの向きから描く腕前を示す格好の機会になったとする。正面を向く者、横を向く者、背を向ける者と、四人のニンフの体は向きを変えながら、暗い肌のサテュロスを囲んで一つの輪のように組み合わされている。ニンフの白くなめらかな肌は筆の跡を残さずに仕上げられ、褐色のサテュロスや、暗い森の緑と強い対比をなす。背景の葉や足もとの草も細かく描き込まれ、画面全体が同じ密度で磨き上げられている。

来歴

所蔵館によれば、アメリカの収集家がすぐに本作を買った。館の来歴の記録では、画家は1873年6月26日にニューヨークのジョン・ウルフに売り、ウルフは1882年4月の自らの売り立てで手放して、絵はエドワード・S・ストークスの手に渡った。ストークスが1901年に没したのち、ニューヨークのジェームズ・D・リアリーと、その息子ダニエル・J・リアリーが受け継いだ。1942年6月5日、ダニエルの遺産から、スターリング・クラークの代理人ハーバート・H・エルファーズが買い取り、1955年に館の収集となった。

意義

所蔵館によれば、本作はやがてニューヨークのホテル「ホフマン・ハウス」のバーに飾られ、クラークはそこで初めてこの絵に出会った。JSTOR デイリーが紹介する美術史家デイヴィッド・スコービーの論文(2002年)によれば、ホテル経営者のストークスがこの大きく刺激的な絵をバーに掛けると、見物の人々が列をなす名所となり、シカゴやサンフランシスコのホテルや酒場も古典的な裸体画を飾るようになった。スコービーは、公の場で女性の裸体を見せることをめぐる当時の中産階級の感覚の大きな変化を、この絵の受け止められ方に見ている。所蔵館は、フェリックス・ブラックモンの作とされる、本作を写したエッチング(1873年頃)も収めている。