《安楽椅子の上の裸婦》
- 作者
- アメデオ・モディリアーニ
- 制作年
- 1917年
- 素材
- キャンバス / 油絵具
- 寸法
- 100 × 65 cm
- 時代
- 20世紀
暗い赤の背景の前で、黒髪を高く結った女性が、クッションを置いた長椅子に斜めに腰かけ、首をかしげてこちらを見る。腰から下を白い布で覆い、手前に張り出した太ももは画面の下の縁で断ち切られている。
概要
《安楽椅子の上の裸婦》(仏: Nu assis sur un divan)は、イタリア出身の画家アメデオ・モディリアーニが1917年に描いた油彩画である。縦100センチ、横65センチのキャンバスで、「ラ・ベル・ロメーヌ(美しいローマの女)」の副題でも知られる。現在は個人が所蔵し、2010年11月にニューヨークのサザビーズの競売にかけられた。
画面の読み解き
暗い赤の背景の前で、女性が長椅子に腰かけ、体を斜めに向けてこちらを見る。黒い髪は高く結い上げられ、首は長く伸びてかしぎ、弓なりの眉の下の目は灰緑色に塗られる。右の腕は立てた太ももの上から胸もとへ曲げ上げられ、手は反対の肩に添えられる。腰から下は白い布に覆われ、左と右下には敷布の白がのぞく。サザビーズの目録は、女性がクッションを置いた座面に腰かけて敷布をまとい、控えめに裸を隠そうとしているとし、手前に張り出した太ももが画面の縁を越えて迫ると述べる。琥珀色とばら色の肌の色調は、肌のぬくもりと、画家がこの絵を描いた親密な空気を伝えるという。右下に「modigliani」の署名がある。
技法・様式
サザビーズの目録によれば、モディリアーニは1908年から、主に女人柱(カリアティード)の姿で裸婦を描いていたが、1914年に彫刻をやめたのちに、本作に見られる独自の表現を築いた。イタリアのルネサンスとマニエリスムの絵画、アフリカの彫刻の簡潔な線、キュビスムの土色の色づかいと幾何学的な肉付けが、ここに重なっている。目録は、姿勢がティツィアーノの《ウルビーノのヴィーナス》を思わせ、輪郭をくっきりと引いて短縮した立体的な姿は、石を彫った経験に負うとする。美術史家キャロル・マンが指摘するように、布や手で体を隠す古代の恥じらいのヴィーナスの型も用いられている。
来歴
サザビーズの目録によれば、1917年の裸婦の連作は画商レオポルド・ズボロフスキが売るために注文したもので、画家はパリのジョゼフ・バラ通りにあるズボロフスキのアパルトマンを仕事場にしていた。本作は画家から画商の手に渡り、ほどなく収集家レーモン=ジャック・サブローが入手したとみられる。その後ジョルジュ・ルナンの収集を経て1987年にパリで競売にかけられ、アジアの個人の収集ののち、1999年にニューヨークのサザビーズで売られた。1978年には、東京、大阪、札幌、名古屋の三越で開かれたエコール・ド・パリの展覧会にも出品された。AP通信によれば、2010年11月の競売では、予想の4,000万ドルを上回る6,890万ドル余りで匿名の入札者が落札し、当時の画家の競売記録となった。
意義
サザビーズの目録によれば、この年の裸婦の連作はパリで大きな騒ぎを起こした。1917年のベルト・ヴェイユ画廊の個展には連作から7点が並び、本作もその一つだった可能性がある。窓に掛けられた裸婦に人だかりができ、警察が一時は展示を止めさせた。人々を驚かせたのは、寓意や物語の口実を持たない同時代の女性の裸だったことだという。同じ年の裸婦には《横たわる裸婦》もある。