《横たわる裸婦》
赤い寝具の上に、女性が仰向けのまま斜めに横たわる。体は左右どちらの縁でも断ち切られ、画面に収まりきらない。1917年のこの作品が並んだ個展は、開いた日のうちに警察の介入を受けた。
概要
《横たわる裸婦》(仏: Nu couché)は、アメデオ・モディリアーニが1917年に描いた油彩画である。縦59.9センチ、横92センチ。上海の龍美術館が所蔵する。画家が集中して裸婦に取り組んだ1916年から1917年の一連のうちの一点で、2015年の競売で当時の美術品としては二番目に高い値がついたことでも知られる。
画面の読み解き
女性が赤い寝具の上に仰向けになり、画面の左下から右上へ斜めに横たわる。頭は左端に寄せられ、青い枕に預けられている。目は細く閉じられ、唇に赤が差される。両腕は頭の後ろへ回され、体は左右どちらの縁でも断ち切られて、画面に収まりきらない。背景は上に濃い藍の座面、右に白い布、残りは赤の面で占められ、奥行きはほとんど描かれない。輪郭は黒い線で引かれ、肌はひと続きの明るい面として塗られる。右上に「modigliani」の署名がある。
技法・様式
1909年からの数年、画家は石を彫ることに打ち込んでいた。その経験は、体を面と輪郭だけでとらえる描き方に残っている。ティツィアーノの《ウルビーノのヴィーナス》以来の横たわる裸婦の型を踏まえながら、神話の口実も室内の物語も取り払い、体そのものを画面いっぱいに置いた点が当時の目には新しかった。
来歴
1917年12月3日、パリのベルト・ヴェイユ画廊で画家の生前唯一の個展が開かれる。街路から見える位置に裸婦が掛けられていたため、初日のうちに警察が踏み込んで撤去を命じた。本作もこのとき並んでいたとみられる。1928年10月2日にトリノの実業家リッカルド・グアリーノの収集に入り、その後ブレーシャのピエトロ・フェロルディ、ミラノのジャンニ・マッティオリと持ち主が替わった。2015年11月9日、ニューヨークのクリスティーズで1億7,040万ドルで落札され、中国の実業家・劉益謙が買い取る。以後、同氏が上海に設けた龍美術館にある。
意義
モディリアーニの裸婦は、生前には画廊から締め出される主題だった。没後に評価は反転し、この一群は20世紀の裸体画を代表する仕事として扱われている。美術市場の価格の記録としても繰り返し参照されるが、画面そのものの要点は、体を輪郭と面に還元し、画面の枠で断ち切るという扱いのほうにある。