《ピエロとアルルカン》
幕の垂れた部屋の隅を、赤と黒の菱形模様の衣装のアルルカンが大股に進み、その後ろから、白い衣装に円錐形の帽子のピエロが身をかがめてついてくる。アルルカンの脇には白い棒が挟まれている。
概要
《ピエロとアルルカン》(仏: Mardi gras)は、フランスの画家ポール・セザンヌが1888年頃に描いた油彩画である。縦102センチ、横81センチのキャンバスで、モスクワのプーシキン美術館が所蔵する。フランス語の題「マルディ・グラ」は、謝肉祭の最後の日を指す。謝肉祭の仮装を主題にした風俗画で、所蔵館は画家の最もよく知られた絵の一つとする。
画面の読み解き
所蔵館によれば、イタリアの即興喜劇コンメディア・デッラルテのおなじみの二人が、二つの気質の永遠の対立を演じている。石膏で鋳たように白くもろいピエロの物憂げな夢見心地に、自信に満ちて弾むような足どりのアルルカンが向き合う。その黒と赤の衣装は炭火に揺れる炎を表し、悪魔めいた姿を際立たせる。所蔵館が運営する国立新西洋美術館の再現サイトによれば、尊大に歩むアルルカンのモデルは17歳だった画家の息子ポール、重く緩やかなピエロのモデルは息子の友人ルイ・ギヨームで、二人は能動と受動、動と静を表す人物となった。二人の動きがつくる三角形の図式は、絵が描かれたパリのヴァル=ド=グラース通りのアトリエの、部屋の隅の形と響き合う。
技法・様式
キャンバスに油彩で描かれる。同サイトによれば、セザンヌは構図の鍵となるアルルカンの姿勢にとりわけ力を注ぎ、油彩の下絵や頭部の鉛筆の習作で何度も描き変えた。張りつめた動きのために画面の形を変える必要が生じ、下に横長の帯状のキャンバスを継ぎ足して、アルルカンの靴の先をその中に収めた。左と上には草花模様の幕が重く垂れ、灰青色の壁と茶色の床が、白と赤の衣装を引き立てる。
来歴
同サイトによれば、1891年からパリのショケ家の収集にあり、1899年からデュラン=リュエル画廊に置かれた。1904年11月18日、モスクワの収集家セルゲイ・シチューキンが同画廊で買い、1918年まで彼の収集にあった。その後は第一新西洋絵画美術館、1923年からは国立新西洋美術館の所蔵となり、1948年にプーシキン美術館へ移った。所蔵番号はЖ-3335。
意義
所蔵館によれば、仮装と変装の主題は、この絵に芸術家の運命をめぐる広い省察の性格を与えている。こうした主題は画家の作品の中でほかに例がなく、その新しい哲学的な扱いはのちの世代に大きな影響を与えた。国立新西洋美術館の再現サイトによれば、シチューキンが買った1904年にはすでに画家の主要作と認められ、ベルリンやウィーンの展覧会で名を知られていた。モスクワでは最もロシアの画家を惹きつけた一枚となり、ヴァレンティン・セローフは「二体の木偶」が頭から離れないと語ったという。