《マグダレーナ・ベントゥーラと夫、息子》
- 作者
- ホセ・デ・リベーラ
- 制作年
- 1631年
- 素材
- キャンバス / 油絵具
- 寸法
- 193.8 × 125.8 cm
- 所蔵
- プラド美術館 (メディナセリ公爵家財団の所有、一時寄託)
- 時代
- バロック・ロココ
- 流派
- スペイン・バロック絵画
黒く長いひげをたくわえた女性が、正面からこちらを見つめ、はだけた胸で赤子に乳を含ませている。その背後の闇には年老いた夫が立ち、右の石の台には、この「自然の奇跡」を記すラテン語の銘文が刻まれている。
概要
《マグダレーナ・ベントゥーラと夫、息子》(西: La mujer barbuda、「ひげの女」)は、ホセ・デ・リベーラが1631年にナポリで描いた油彩画である。縦193.8センチ、横125.8センチのキャンバスで、メディナセリ公爵家財団が所有し、プラド美術館に一時寄託されている。所有者の解説(美術史家アルフォンソ・E・ペレス・サンチェス、2008年)によれば、ナポリ副王の第3代アルカラ公フェルナンド・アファン・デ・リベーラの注文で描かれた。リベーラの作品の中でも特異な一点で、当時のスペインの、いやヨーロッパの絵画の中でも最も奇妙な作品の一つだという。
画面の読み解き
画面の中央で、頭に小さな帽子をかぶり、黒く長いひげをたくわえたマグダレーナ・ベントゥーラが、正面を向いて立つ。胸をはだけて、赤い布にくるまれた赤子に乳を含ませている。左の背後の闇には、年老いた夫が立つ。右の石の台には長いラテン語の銘文が刻まれ、その上に紡錘と、毛糸を巻いた糸巻きのような道具が置かれている。所有者の解説によれば、紡錘は家事を表す女性の持物で、糸巻きとともに、女性の男性的な姿と逆説的な対比をなす。銘文は「見よ、自然の大いなる奇跡」に始まり、ナポリ王国アブルッツォ地方のアックーモリの町の52歳の女性で、37歳のときに毛が生え始め、女性というより、ひげの濃い男性のように見えると記す。
技法・様式
所有者の解説によれば、本作はカラヴァッジョに直結するテネブリズムで描かれ、濃く劇的な闇から、光に照らされた意味深い要素がくっきりと浮かび上がる。厚く正確な筆は、形を厳しく造形し、しわも異形もひとつとして見逃さず、布地の違いを手で触れるように描き分けている。妻が男性のような姿になっていく運命の劇と、夫の諦めたような苦さが、強い心理的な力で表されているという。記録としての性格は、当時の分析的な自然主義の「科学以前」の雰囲気とも結びついている。
来歴
所有者の解説によれば、ヴェネツィア大使は1631年2月11日の書簡に、副王の部屋で「名高い画家」が、完全に男の顔をして1パルモ以上の美しい黒いひげを持ち、胸も毛深い、アブルッツォの既婚の女性の肖像を描いていたと記している。銘文によれば、絵はその5日後の1631年2月16日に、副王の命で「生きた姿を写して」描き上げられた。副王の一族のもとに伝わり、メディナセリ公爵家とつながって、1808年には同家の所有だった。パリのナポレオン美術館に送られたのち1813年にスペインに戻り、1818年から1829年まではマドリードの王立サン・フェルナンド美術アカデミーの目録に載る。のちメディナセリ家に返され、相続でレルマ家に移り、トレドのタベーラ施療院に置かれた。
意義
所有者の解説によれば、画家の腕は、記録としての「症例」を、絵の美しさと謎めいた力を兼ねそなえた見事な芸術作品に変えた。銘文には、画家自身を「スペイン人、キリスト騎士団の騎士、当代のもう一人のアペレス」と記している。記録として描かれながら、より深い象徴的な意味を込めた可能性もあるという。1884年には、1590年にマドリードの宮廷に来たひげの女性ブリヒダ・デル・リオをサンチェス・コタンが描いた肖像と混同されたこともある。