《青い冠の聖母》
古代の廃墟が残る丘を背に、青い冠をつけた聖母がひざまずき、青い布の上で眠る幼子キリストから薄い布をそっと持ち上げる。聖母に肩を抱かれた幼い洗礼者ヨハネは、十字の杖を手に掌を合わせて見入る。
概要
《青い冠の聖母》は、ラファエロの工房で働いた画家ジャンフランチェスコ・ペンニの作とされる油彩の板絵で、パリのルーヴル美術館が所蔵する。館の記録では16世紀の第1四半期、1512年から1518年頃の作で、縦68センチ、横48.7センチのポプラ材の板に描かれている(額を含めると縦83.5センチ、横64.3センチ)。所蔵番号はINV 603。館は現在の帰属をペンニとし、かつての帰属をラファエロと記録している。現在は展示されていない。
画面の読み解き
画面では、青い冠をつけ、薔薇色の衣に青い外套をまとった聖母がひざまずき、左手で薄く透ける布を持ち上げて、青い布の上で眠る裸の幼子キリストを見せている。右では、毛皮をまとった幼い洗礼者ヨハネが、細い十字の杖を抱えて手を合わせ、聖母に肩を抱かれながら幼子を見つめる。背景には、アーチの残る古代の廃墟と城壁、遠くの町と山並みが広がり、廃墟の上には小さな人影が見える。館の来歴欄に引かれた1742年の国の記録は、本作を「ラファエロ、沈黙」の名で記している。
技法・様式
『イタリア人名事典』によれば、ペンニはフィレンツェに生まれ、少年のころからラファエロの工房に入り、ジュリオ・ロマーノとともに師の第一の協力者となった。事典は、ペンニの作とほぼ一致して認められるカーヴァ・デ・ティッレーニの《降誕》に見られる、ラファエロの多くの変奏をより単純な画面にまとめる描き方が、本作《冠の聖母》(1512〜1513年)にも見られるとしている。英王室コレクションの解説は、本作をラファエロの工房の作とし、手がけた人物としてペンニかジュリオ・ロマーノを挙げる。
来歴
館の来歴によれば、本作は17世紀前半にM・パルティチェッリ・デムリ(1596〜1650年)のもとにあり、その娘婿L・フェリポー・ド・ラ・ヴリリエール(1599〜1681年)に伝わった。1705年より前にはシャトーヌフ侯爵B・フェリポー・ド・ラ・ヴリリエール、1705年から1713年まではP・ルイエ・ド・マルブフが所有し、1713年にトゥールーズ伯ルイ・アレクサンドル・ド・ブルボン(1678〜1737年)が手に入れた。1728年にカリニャーノ公ヴィットーリオ・アメデーオが取得し、公のパリのコレクションにあったことは、フランソワ・ド・ポワイーがこの絵をもとに彫った版画の銘にも記されている。その後ルイ公を経て、1742年に王妃の侍従N・アレニョンを仲立ちにルイ15世が購入し、王室コレクションから館に入った。
意義
館の記録によれば、本作は2012年から2013年にマドリードのプラド美術館とパリのルーヴル美術館を巡回した「晩年のラファエロ」展、2017年から2018年にウィーンのアルベルティーナで開かれた「ラファエロ」展に出品された。長くラファエロの名で伝わり、フランスの名だたる収集家の手を経て王室コレクションに入った作品であり、ラファエロの工房の弟子たちの仕事を知る手がかりとなっている。