《聖母子と二人の天使》
石の窓枠の中で、真珠の冠と薄いヴェールを髪に編み込んだ聖母が、手を合わせて横を向いている。その前で、二人の天使に支えられた幼子イエスが母へ両腕を差し伸べ、手前の天使は笑ってこちらを見る。窓の外には、岩山と海の広がる風景が見える。
概要
《聖母子と二人の天使》(伊: Madonna col Bambino e due angeli)は、イタリアの画家フィリッポ・リッピが1460年から1465年ごろに描いたテンペラの板絵である。縦95センチ、横62センチで、フィレンツェのウフィツィ美術館が所蔵する。所蔵館によれば、リッピの最も名高い作品で、描写のすばらしい自然さが際立つ。所蔵館の動画では「リッピーナ」の愛称でも呼ばれている。初期ルネサンスのフィレンツェで描かれた聖母子像である。
画面の読み解き
所蔵館によれば、聖母は玉座に座っているが、見えるのは柔らかい刺繍のクッションと彫刻のある肘掛けだけである。聖母は手を合わせて祈りながら、息子のほうへ身を向けて見つめる。その表情は穏やかで慈しみに満ち、息子を待つ苦難の運命を予感するかのように、どこか憂いを帯びている。おくるみだけをまとった幼子イエスは、二人の天使に支えられて母を見返し、両腕を差し伸べる。手前の天使は笑って外を見やり、見る者を場面へと引き込む。窓の外には、海を見下ろす岩や草木、建物の広がる風景が開けている。
技法・様式
板にテンペラで描かれる。所蔵館によれば、人物を半身ほどに大きく描き、石材「ピエトラ・セレーナ」の枠で囲んだ狭い空間に収める構図は、同時代のフィレンツェの彫刻家たちの浮き彫りに通じる。聖なる像は、感情の表し方にも、同時代の流行に倣った衣装と髪型の選び方にも、深い人間味をもって描かれている。聖母は、真珠の冠とヴェールを髪に編み込んだ、15世紀後半のフィレンツェの貴婦人のような装いをしている。光輪はかすかに示されるだけで、細い輪と光線が背後の風景を覆わない。
来歴
所蔵館によれば、もとの設置場所はわかっていない。最初の記録は18世紀末で、そのころはフィレンツェのポッジョ・インペリアーレのメディチ家別荘にあった。所蔵番号は1890年目録の1598番。
意義
所蔵館によれば、この構図ははじめから評判となり、リッピの弟子だった若いサンドロ・ボッティチェッリをはじめ、多くの画家が手本とした。聖母の顔は、プラートの若い修道女で、のちにリッピの妻となったルクレツィア・ブーティだとする説もあるが、それを裏づけるものはまだない。館の動画解説は、本作を家庭の親密さを切り取った一枚と紹介している。