《大水浴図》
- 作者
- ポール・セザンヌ
- 制作年
- 1900–1906年
- 素材
- キャンバス / 油絵具
- 寸法
- 210.5 × 250.8 cm
- 所蔵
- フィラデルフィア美術館
- 時代
- 世紀末〜ポスト印象
- 流派
- ポスト印象派
弓なりに傾いだ木立が三角形の枠をつくり、その下に十数人の裸婦が川辺に集う。セザンヌが晩年の数年を費やした最大の画面で、塗り残しを抱えたまま1906年の死を迎えた。
概要
《大水浴図》(仏: Les Grandes Baigneuses)は、ポール・セザンヌが1900年から1906年にかけて描いた油彩画である。縦210.5センチ、横250.8センチ。フィラデルフィア美術館が所蔵する。生涯にわたって描き続けた水浴図のうち最大の一点で、ポスト印象派が印象派の先に求めた画面の構造を、群像の形で示した作品である。
画面の読み解き
左右から傾いた木立が中央で交わり、大きな三角形の枠をつくる。その下に裸婦たちが二つの群れに分かれて座り、あるいは立ち、体の向きと手足の線が枠の傾きに呼応する。中景には水面が横たわり、対岸には泳ぐ人と犬、遠くに町の尖塔がのぞく。顔には目鼻がほとんど描き込まれず、人物は個人ではなく風景を構成する量塊として扱われている。下地の青灰色が所々に露出したまま残されており、未完の状態が画面の骨組みをそのまま見せている。
技法・様式
同じ向きの短い筆触を並べて面を起こす方法が全面に及び、裸体の肌、水、空、樹皮が同じ筆の運びで結ばれる。輪郭は一本の線で閉じられず、青い線が何度も引き直されて、形と背景が互いに食い込む。遠近は線ではなく色の寒暖の移り変わりで示され、遠景の町が前景と同じ密度で置かれているために、画面は奥へ引かず一枚の面として立ち上がる。セザンヌは30年以上にわたり水浴の主題を油彩と水彩で繰り返しており、本作を含む大画面3点は最後の総まとめにあたる。
来歴
画家の死後、アトリエの遺品として画商アンブロワーズ・ヴォラールの手に渡った。次いで収集家オーギュスト・プルランが所有し、その子ジャン=ヴィクトールに引き継がれる。プルラン家は1936年のオランジュリー美術館の回顧展に本作を貸し出した。その後ニューヨークのワイルデンスタイン画廊を経て、1937年にフィラデルフィア美術館がW・P・ウィルスタック基金で購入した。所蔵番号W1937-1-1。
意義
1907年のサロン・ドートンヌで開かれたセザンヌ回顧展は、若いピカソとブラックに衝撃を与えた。裸婦の群像を画面の構造へ還元する本作の方法は、同じ年に描かれたピカソの《アヴィニョンの娘たち》としばしば並べて論じられ、キュビスムの出発点の一つに数えられる。マティスの装飾的な群像にも同じ系譜が流れている。