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《ユピテル、ネプトゥヌスとプルート》

Giove, Nettuno e Plutone
《ユピテル、ネプトゥヌスとプルート》ミケランジェロ・メリージ・ダ・カラヴァッジオ
Wikimedia Commons / ヴィッラ・ルドヴィーシ / Public domain 拡大して見る ⌕
PLATE
作者
カラヴァッジョ
制作年
1597–1599年
素材
石膏 / 油絵具
寸法
300 × 180 cm

細長い天井の中央に、透きとおる大きな天球が浮かぶ。上では鷲にまたがる裸の神が球に手を伸ばし、下の雲の中では海馬や三つ頭の犬とともに二柱の神が身をよじる。

概要

《ユピテル、ネプトゥヌスとプルート》は、イタリアの画家カラヴァッジョが描いた天井画で、ローマのヴィッラ・ルドヴィーシの館カジノ・アウローラに残る。館を所有するボンコンパーニ・ルドヴィーシ家の文書館がグーグル・アーツ・アンド・カルチャーで公開している解説によれば、フランチェスコ・マリア・デル・モンテ枢機卿が1597年に錬金術の実験室の天井のために注文したもので、石膏の上に油彩で描かれた、カラヴァッジョ唯一の壁画である。部屋の幅はわずか2.75メートル。日本語版ウィキペディアは、制作年は特定できないものの1599年と考える研究者が多いとしている。三柱の神を描いた神話画であり、錬金術の考えを表す寓意画でもある。

画面の読み解き

一族の文書館の解説によれば、カラヴァッジョは3人のオリュンポスの神によって錬金術の元素の寓意を描いた。ユピテルは空気と硫黄を、ネプトゥヌスは水と水銀を、プルートは土と塩を表す。ユピテルはまたがる鷲によってそれと分かり、天球を回しているように見える。透きとおった球には、地球のまわりを回る太陽と、ユピテルが手を置く魚座から、牡羊座、牡牛座、双子座までの黄道十二宮(2月20日から6月21日)が描かれ、錬金術の作業の始まりと進展を指しているという。ユピテルに鷲が添うように、ネプトゥヌスには海馬が、プルートには三つの頭がそれぞれ違うふうに歯をむく番犬ケルベロスが添えられている。3人の神はいずれもカラヴァッジョの自画像だという説もある。日本語版ウィキペディアは、四大元素のうち火が描かれていないのは、当時の考えでは火がほかの三つの要素の融合から生まれるとされたためだと解釈されている、としている。

技法・様式

一族の文書館によれば、ジョヴァンニ・ピエトロ・ベッローリは1674年のカラヴァッジョ伝で、画家がこの構図で遠近法の腕前を示そうとしたと書いている。日本語版ウィキペディアが引くベッローリの記述では、カラヴァッジョは平面も遠近法も分かっていないという非難を意識し、下から見上げた人体を描くことで最も難しい短縮法に挑んだといい、また一度もフレスコ画を手がけなかったため、神々は油彩で描かれた。画面では、上の神の体が足の裏や尻から見上げられ、下の神々も膝や腹を手前に突き出した、真下から仰ぐ角度で描かれている。同記事は、この劇的な仰視の表現がマントヴァのパラッツォ・デル・テにあるジュリオ・ロマーノの壁画に想を得たものかもしれないとしている。

来歴

一族の文書館によれば、デル・モンテ枢機卿は1596年から1621年まで館を所有した。錬金術の部屋は館のほかの部分から離れ、狭い扉一つからしか入れなかったが、1621年に館を買ったルドヴィーコ・ルドヴィーシ枢機卿が入口を一つ増やした。天井画は17世紀末のベッローリには知られていたが、いつしか覆い隠され、1969年にジュリアーナ・ザンドリによって再発見された(同じ文書館の館の紹介では1968年)。2019年11月にはボローニャ大学ラヴェンナ校の調査団が作品とその周囲を新たに撮影し、天井の楕円形の部分が換気口の蓋であると確かめた。これは、部屋で実際に錬金術の実験が行われていたことを示している。日本語版ウィキペディアによれば、真筆を疑う研究者も少なくなかったが、1989年から1990年の修復ののちカラヴァッジョの作として広く認められるようになった。

意義

日本語版ウィキペディアによれば、本作の図像の構想はデル・モンテ枢機卿によるものと考えられるが、神々や動物の表現にはカラヴァッジョらしさがうかがえる。一族の文書館は、本作を「カラヴァッジョ唯一の天井画」として紹介し、錬金術の小部屋という本来の場所に今も残る点を強調している。また一族の文書館の館の紹介は、館の2階の見どころとして、本作をグエルチーノが1622年に描いたフレスコ画《名声》と並べて挙げている。