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《ユピテルとテティス》

Jupiter et Thétis
《ユピテルとテティス》ドミニク・アングル
Wikimedia Commons / グラネ美術館 / Public domain 拡大して見る ⌕
PLATE
作者
ドミニク・アングル
制作年
1811年
素材
キャンバス / 油絵具
寸法
324 × 260 cm
所蔵
グラネ美術館 (1835年に国が寄託し、2024年に国からエクス=アン=プロヴァンス市へ所有権を移転)

雲の上の玉座に、笏を手にしたユピテルが正面を向いて堂々と座る。足もとでは、灰緑の衣を腰にまとったニンフのテティスが神の膝にすがり、腕を伸ばしてそのあごに触れる。奥の雲間からはユノが見つめる。

概要

《ユピテルとテティス》は、フランスの画家ドミニク・アングルが1811年に描いた油彩の神話画で、南仏エクス=アン=プロヴァンスのグラネ美術館が所蔵する。館の記録では、キャンバスに油彩で、縦324センチ、横260センチ。館は本作を、19世紀フランス絵画の収集の頂点となる名高い大作で、館を代表する作品の一つとしている。1835年に国から館に寄託され、2024年に所有権が国からエクス=アン=プロヴァンス市に移された。ナポレオン財団の解説によれば、ローマのフランス・アカデミーの給費生だったアングルが1811年に完成させ、翌年のパリのサロンに出品した。

画面の読み解き

ナポレオン財団の解説によれば、主題はホメロスの『イーリアス』から取られている。アキレウスの母であるニンフのテティスが、息子とアガメムノンの争いを収めてくれるようユピテルに懇願し、遠くからユノがその場面を見つめている。画面の中央、雲の上の玉座には、右手で高く笏を握るユピテルが、ばら色のマントを膝に掛けて正面を向いてどっしりと座り、右わきには鷲が控える。黄金の玉座の台座には浮き彫りが施されている。左下では、テティスが神の膝に手を置いてすがりつき、伸ばした腕で神のあごひげに触れる。左上の雲間には、頬杖をついたユノの姿が小さく見える。

技法・様式

同財団の解説によれば、正面を向いて座る巨大な神の像は、古代の数多くの例からヤン・ファン・エイクの父なる神の姿まで、古くからよく知られた図像で、多くの手本がアングルの着想源となりえた。とはいえ第一の源は、アングルがその純粋な線描を敬愛した、ホメロスの挿絵画家ジョン・フラックスマンの版画である。1793年に出た『イーリアス』の挿絵の何点かに、全能のユピテルと優美なテティスが描かれている。画面全体は男と女の対比で組み立てられ、力強く量感あるユピテルの体に対して、テティスの体はくねるように引き伸ばされ、力と厳しさに対するけだるさと柔らかさが際立つ。財団は、無表情で巨大な神の足もとの官能的なニンフを、アングルの作品の中でも最もエロティックな構図の一つとしている。

来歴

館の記録によれば、本作は1835年に国から寄託され、町の美術館に収められた。館はアングルの作品として、ほかに友人の画家フランソワ=マリウス・グラネの肖像も持ち、グラネの部屋はその肖像を中心に構成されている。2024年には、国からエクス=アン=プロヴァンス市への所有権の移転が行われた。

意義

ナポレオン財団の解説によれば、本作は、1806年のサロンで厳しく批判された《玉座のナポレオン》への応答でもあった。ユピテルは最高の支配者の化身として皇帝の分身となり、同じ近寄りがたい姿勢をとって、玉座、笏、マント、鷲という同じ持物を備える。批評はどちらにも厳しく、肖像は「奇妙」で「ゴシック的」と言われ、《ユピテルとテティス》は立体感の乏しさと人物の釣り合いの悪さを責められた。テティスに、離婚後の皇帝が迎えた新しい妃マリー=ルイーズを、奥のユノに、ひとり取り残されたジョゼフィーヌを見る見方もあり、テティスに主人の意志に従うフランスの姿を読む人もいたという。