《ホロフェルネスの首を斬るユディト》
- 作者
- カラヴァッジョ
- 制作年
- 1599年
- 素材
- キャンバス / 油絵具
- 寸法
- 145 × 195 cm
- 所蔵
- 国立古典絵画館
- 時代
- バロック・ロココ
- 流派
- イタリア・バロック絵画
寝台に横たわる男の首に、若い女が剣を入れる。男は口を開けて叫び、首から血が噴き出す。女は眉をひそめて男の髪をつかみ、そばでは老いた侍女が布を握りしめて見つめる。背後の闇には深紅の垂れ幕が波打つ。
概要
《ホロフェルネスの首を斬るユディト》(伊: Giuditta e Oloferne)は、カラヴァッジョが1599年頃に描いた油彩画である。縦145センチ、横195センチ。ローマのバルベリーニ宮殿にある国立古典絵画館が所蔵する。主題は旧約聖書外典「ユディト記」で、町を包囲したアッシリアの将軍ホロフェルネスを、ユダヤの寡婦ユディトが討ち取る場面を描く。イタリアの美術情報サイト arte.it によれば、リグーリア出身の銀行家オッターヴィオ・コスタのために描かれた。イタリア・バロック絵画の出発点に立つ画家の、ローマ時代の作品である。
画面の読み解き
画面の左で、上半身裸のホロフェルネスが寝台の白い敷布の上に身をよじり、口を大きく開けて叫んでいる。見開いた目は上を向き、首の傷からは赤い血が幾筋も噴き出して敷布に落ちる。右では、白いブラウスに茶色のスカートのユディトが、左手で男の髪をつかみ、右手に握った剣を首に入れている。眉をひそめた顔には、ためらいとも嫌悪ともつかない表情が浮かぶ。その右に、白い頭巾をかぶった皺の深い老いた侍女アブラが立ち、布を両手で握りしめて、身を乗り出すように見つめる。背景は闇に沈み、上方には深紅の垂れ幕が大きく波打つ。
技法・様式
所蔵館は2021〜2022年の展覧会の紹介で、本作が首を斬る殺害の場面そのものを舞台のように示し、それまでの伝統と決別する作品だとしている。それ以前のユディトの絵の多くが、首を斬り終えて手にする姿を描いたのに対し、カラヴァッジョは剣が首に入った瞬間を選んだ。背景を闇に沈め、左上からの強い光で三人の姿だけを浮かび上がらせるテネブリズムが、その一瞬を際立たせる。若いユディトのなめらかな肌と、侍女の深い皺、ホロフェルネスの筋肉のこわばりが、同じ光の中で並べられている。
来歴
arte.it によれば、作品はやがて行方が知られなくなり、100年以上も研究者の目から消えていた。ローマの修復家ピコ・チェッリーニがジュリア通りの家を訪ねたとき、持ち主ヴィンチェンツォ・コッピのもとで、本作はオラツィオ・ジェンティレスキの作とされていた。コッピは母方の祖先から相続していたという。チェッリーニが撮った写真を見た美術史家ロベルト・ロンギは、1951年にミラノの王宮で開かれていたカラヴァッジョとその追随者の展覧会の会期を延ばさせ、本作を加えた。1971年9月、イタリア政府が2億5000万リラで買い取り、国立古典絵画館の所蔵となった。
意義
2021年11月26日から2022年3月27日まで、所蔵館ではマリア・クリスティーナ・テルツァーギの企画による展覧会「カラヴァッジョとアルテミジア ユディトの挑戦 16〜17世紀の絵画における暴力と誘惑」が開かれ、本作は「カラヴァッジョと最初の追随者たち」の章の中心に置かれた。展覧会は、アルテミジア・ジェンティレスキら、斬首の瞬間という主題をカラヴァッジョから受け継いで描いた画家たちの作品を本作と並べ、その影響の広がりを示した。