《安全祈願》
石造りの城の階段で、金の模様の白いドレスをまとう金髪の女性が欄干から身を乗り出し、馬上の騎士の腕に赤い飾り帯を結ぶ。騎士は兜をかぶって槍を立て、背後のアーチの向こうでは、旗を掲げた兵士たちが出陣を待つ。
概要
《安全祈願》(英: God Speed)は、イギリスの画家エドモンド・レイトンが1900年に描いた油彩画である。縦160センチ、横116センチ。出陣する騎士の腕に、城の階段の上から女性が赤い飾り帯を結ぶ別れの場面を描く。サザビーズによれば、題の「ゴッドスピード」は15世紀イングランドの「god spede you」にさかのぼる、旅立つ人の道中の無事を願う別れの言葉である。現在は個人が所蔵する。
画面の読み解き
サザビーズの解説によれば、中世の城の守られた中庭で、白馬に乗った若い騎士が美しい乙女に別れを告げる。乙女は欄干から身を乗り出し、刺繍をほどこした飾り帯を騎士の腕に結ぶ。それは彼への愛と、彼が帰ってくるという信念のしるしである。騎士は帯が結ばれるのを静かに待ち、目を見開いたひたむきな表情に、騎士道の献身が表れる。宮廷風恋愛の理想では、騎士はまず自分の貴婦人に仕えるものだった。石壁にはピンクのつるバラがからむが、花びらは散りはじめており、愛が危うくなっていることの象徴かもしれないという。騎士は戦いに向かうが、仲間とともに城へ、そして彼女のもとへ戻れるかはわからない。
技法・様式
キャンバスに油彩で描かれ、左下に「E. BLAIR LEIGHTON. 1900.」と署名と年記がある。サザビーズは、緻密に研究された細部と、人間性を繊細にとらえる感覚を、レイトンの作品にいつも見られる二つの特質に挙げる。英語版ウィキペディアが引く1905年の雑誌記事によれば、ロイヤル・アカデミーへ送り出す準備が整ったとき、レイトンはアトリエで最後の変更を加え、1週間分の仕事を削り落として、2時間で望む形に描き直したという。
来歴
1900年のロイヤル・アカデミー展に出品された。サザビーズによれば、画家から買ったのはウォルフ(1913年までにルイス・ウォルフ社がフォトグラビュールの複製を出版した)で、その後メンドーサ大尉、H・シンホップ、C・H・マーティノーの手を経た。1988年と2000年にロンドンのクリスティーズ、2007年にニューヨークのサザビーズの競売に出て、アメリカとイギリスの個人の収集を渡った。英語版ウィキペディアによれば、2012年5月10日、ロンドンのサザビーズで個人が落札した。
意義
サザビーズによれば、名誉と忍耐と勇気を描いた本作は、第二次ボーア戦争が最も厳しかった1900年に描かれ、その象徴はロイヤル・アカデミー展の観客にも明らかだった。同じ展覧会には、友人のフランク・ディクシーやソロモン・J・ソロモンも騎士の絵を出した。レイトンは本作に続いて、1901年の《騎士号授与》など、騎士道を主題とする歴史画の連作を描いている。日本語版ウィキペディアによれば、本作と《騎士号授与》は世界中で複製として親しまれ、中世の図像の典型として扱われてきた。サザビーズは、レイトンをディクシーやジョン・ウィリアム・ウォーターハウスとともに、最終段階のラファエル前派を担った画家とする。