クレジット方針 収録範囲について お問い合わせ
作品COLLECTION 画家ARTISTS 流派MOVEMENTS 時代PERIODS 所蔵MUSEUMS 様式史HISTORY 用語集GLOSSARY 検索SEARCH

《マールテン・ファン・ニューウェンホーフェの二連祭壇画》

Diptiek van Maarten van Nieuwenhove
《マールテン・ファン・ニューウェンホーフェの二連祭壇画》ハンス・メムリンク
Wikimedia Commons / 聖ヨハネ病院 / Public domain 拡大して見る ⌕
PLATE
作者
ハンス・メムリンク
制作年
1487年
素材
板 / 油絵具
寸法
44.7 × 67 cm
広告

左の板では、赤い外衣の聖母が膝の幼子にりんごを差し出す。右の板では、黒髪の若い男が開いた祈祷書を前に手を合わせる。二人の背後には同じ部屋の窓とステンドグラスが続き、窓の外には水辺の景色がのぞく。

概要

《マールテン・ファン・ニューウェンホーフェの二連祭壇画》は、初期フランドル派の画家ハンス・メムリンクが1487年に描いた油彩の祭壇画で、ベルギーのブルッヘにある聖ヨハネ病院が所蔵する。左の板に聖母子、右の板に祈る若い寄進者を描いた二枚続きの礼拝画で、右の男は依頼主自身の寄進者像である。館によれば、本作には当初の額縁と蝶番が今も残っている。館の記録では、所蔵番号はO.SJ0178.Iで、左右の翼はそれぞれ縦52センチ、横41.5センチ、全体の重さは30キロある。ベルギー王立文化遺産研究所(KIK-IRPA)の記録では、各翼の板は縦44.7センチ、横33.5センチである。館は本作を、フランデレンの「傑作」に指定された作品として紹介している。

画面の読み解き

館の解説によれば、祈る男の背後の窓からは、「愛の湖」の名で知られるミンネワーテルにかかる橋が見え、舞台がブルッヘであることが分かる。額の下辺を横切るラテン語の銘文は、この男がマールテン・ファン・ニューウェンホーフェで、1487年、23歳のときにこの二連画を作らせたことを伝える。ビロードの胴衣と毛皮で裏打ちした衣は彼の裕福さを示し、ブルッヘの富裕な門閥に属した彼は、のちに市長にもなった。背後のステンドグラスには、名の由来である聖マルティヌスが、マントを二つに裂いて半分を物乞いに与える姿が描かれ、キリスト教の慈愛の手本を示す。マールテンの祈りは、同じ部屋に現れた聖母子に向けられている。幼子イエスは母の手からりんごを受け取ろうと手を伸ばす。それは、人の救いのために十字架で死ぬという重荷を引き受けることを意味し、マリアもまた息子の運命を悟っている。左上には一族の紋章と「Il y a cause(理由あり)」の標語があり、雲から現れた天の手が金の種を地に蒔く四つの円形の図は、「新しい庭」を意味する一族の名にかけたものとみられるという。

技法・様式

館は、聖母のすぐ後ろにある凸面鏡に目を向けるよう促している。鏡には、座る聖母と、その脇にひざまずくマールテンが映る。メムリンクは、二人が本当に同じ部屋にいて、これが幻ではなく現実なのだと示しているかのようだ、と館は述べる。日本語版ウィキペディアによれば、単色の背景の代わりに二枚の板を一続きの部屋に置いたのは新しい工夫で、鏡はヤン・ファン・エイクの《アルノルフィーニ夫妻像》に着想を得たものとされる。館はまた、初期フランドル派の画家が質感と写実の表現に長けていたことを本作が示す一方、マールテンのビロードの胴衣は、おそらく画家が意図したとおりには見えていないと指摘する。植物などから作る有機顔料の中には、何世紀もの間に色が変わったり消えたりしたものがあり、作品の見え方を大きく変えることがあるという。

来歴

フランデレン美術コレクションの旧サイト「フランドルの画家たち」によれば、本作はもともとブルッヘの聖ユリアヌス病院にあった。1796年以降、町の古い教会関係の施設の財産は公の救貧の機関に委ねられ、1815年にナポレオンが失脚すると、さまざまな施設の財産が聖ヨハネ病院に移された。本作が聖ヨハネ病院にあるのはそのためである。館によれば、マールテンは36歳で亡くなった。

意義

館は、聖ヨハネ病院では信仰の世界と看護の世界という二つの世界が分かちがたく結びついていたとし、中世の人々が信仰を体で感じられる存在として受け止めていたことを、この二連画がよく示していると述べる。日本語版ウィキペディアは、本作を初期ネーデルラント絵画の礼拝用二連画の早い例に挙げている。同サイトによれば、聖ヨハネ病院の収集の要はメムリンクの六つの傑作で、そのうち四つは病院の修道院共同体が注文し、今も当初の場所にある。本作は、病院の外から移ってきた作品の例として挙げられている。館は、メムリンクの収集を世界で2番目に大きいものとしている。