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《ディアナとアクタイオン》

Diana e Atteone
《ディアナとアクタイオン》ティツィアーノ・ヴェチェッリオ
Wikimedia Commons / ロンドン・ナショナル・ギャラリー / Public domain 拡大して見る ⌕
PLATE
作者
ティツィアーノ・ヴェチェッリオ
制作年
1556–1559年
素材
キャンバス / 油絵具
寸法
184.5 × 202.2 cm
所蔵
ロンドン・ナショナル・ギャラリー (スコットランド国立美術館群と2009年から共同所有) 、 スコットランド国立美術館 (ロンドン・ナショナル・ギャラリーと共同所有。2026〜2030年はここで展示)

赤い幕をかき分けて、狩人の若者が泉の水浴の場に踏みこむ。裸のニンフたちは驚いて身を隠し、右では三日月の髪飾りをつけた女神ディアナが白い布で体を覆いながら、若者をにらむ。柱の上には鹿の頭骨が置かれている。

概要

《ディアナとアクタイオン》(伊: Diana e Atteone)は、ティツィアーノ・ヴェチェッリオが1556年から1559年にかけて描いた油彩画である。縦184.5センチ、横202.2センチ。ロンドン・ナショナル・ギャラリーとスコットランド国立美術館群が2009年に共同で購入し、両館が交代で展示している。2026年から2030年までは、エディンバラのスコットランド国立美術館に展示される。古代ローマの詩人オウィディウスの『変身物語』から、狩人アクタイオンが女神ディアナの水浴の場に迷いこむ場面を描く。ヴェネツィア派の画家ティツィアーノが、スペイン王フェリペ2世のために描いた神話画の連作ポエジアの一点である。

画面の読み解き

左から、矢筒を背負った狩人アクタイオンが赤い幕をかき分けて踏みこみ、驚いて片手を上げる。足もとには弓が落ち、後ろには黒い猟犬がいる。幕の下では、青い布をまとったニンフが身を起こして彼を見上げ、ほかのニンフたちも柱の陰に隠れ、あるいは体をすくめる。右では、三日月の髪飾りをつけた女神ディアナが赤い布の上に座り、白い布で身を覆いながら、アクタイオンを横目でにらむ。その後ろでは、黒い肌の侍女が女神に布をかける。泉の縁にはガラスの花瓶と鏡が置かれ、手前では小さな犬が吠える。背後には崩れかけたアーチが立ち、その向こうに青空と山並みが広がる。右の柱の上には鹿の頭骨が置かれ、女神の頭上の枝には獣の皮が掛けられている。

技法・様式

所蔵館によれば、鹿の頭骨と、女神の頭上に掛けられたかつての獲物の皮が、アクタイオンの運命を予告している。女神の怒りを買った彼は鹿に変えられ、自分の猟犬たちにかみ殺される。奥の風景には、鹿を追う女神の小さな姿も描かれている。所蔵館は、ニンフが物干し綱から急いで引きはがした深紅の幕が、アクタイオンの驚きの身ぶりを際立たせると述べる。その赤は、彼の半長靴の朱の裏地から、ディアナが脱いだ衣の深い赤へと目を導き、やがて彼の血まみれの皮も女神の頭上の皮のように吊るされることを思わせる。夕方の光は、ヴェネツィアのガラスの花瓶や鏡、水面、ビロードの衣にきらめく。

来歴

ロンドン・ナショナル・ギャラリーによれば、ティツィアーノは1556年に《ペルセウスとアンドロメダ》をフェリペ2世に送ったのち、3年をかけて本作と《ディアナとカリスト》を仕上げた。遅れた理由を、画家は「陛下にふさわしいものを作りたいという熱い願い」のためだと書いている。2点は対として構想され、背景の風景がひと続きになる。スコットランド国立美術館群によれば、2点は1704年にフランス大使に贈られ、オルレアン公フィリップ2世のコレクションに加わった。フランス革命後の1798年、ロンドンでの売り立てで、ブリッジウォーター公ら3人のイギリスの買い手の手に渡る。ブリッジウォーター・コレクションは1945年からエディンバラの国立美術館に寄託され、2009年に両館がサザーランド公から5000万ポンドで本作を買い取った。対の《ディアナとカリスト》も2012年に両館のものとなった。所蔵番号はロンドンがNG6611、エディンバラがNG 2839。

意義

ロンドン・ナショナル・ギャラリーによれば、ティツィアーノはこれらの神話画を詩に匹敵する絵とみなし、「ポエジア」と呼んだ。本作と《ディアナとカリスト》は、それまでの作品より色彩の幅が広く、構図も複雑な、前例のない美しさと創意の作品だった。画家はその後、物語の結末を描く《アクタイオンの死》に取りかかったが、満足のいく形に仕上げられず、死ぬまで工房に置いていた。2020年に同館で開かれた展覧会「ティツィアーノ 愛、欲望、死」では、6点のポエジアが16世紀末以来はじめて一堂に会した。同館は、ティツィアーノの神話画が、17世紀のディエゴ・ベラスケスやルーベンスへと続く伝統を切り開いたとしている。