《バジールのアトリエ》
天井の高い明るいアトリエで、パレットを手にした長身の男が画架の前に立ち、帽子の男が絵をのぞき込む。右ではピアノを弾く人物、左の階段には語り合う人々がいる。壁には大きな裸婦像や風景画が所狭しと掛かる。
概要
《バジールのアトリエ》(仏: L'Atelier de Bazille)は、フランスの画家フレデリック・バジールが1870年に描いた油彩画である。縦98センチ、横128センチ。パリのラ・コンダミーヌ通り9番地にあった自分のアトリエと、そこに集う画家や友人たちを描いた、集団肖像画を兼ねた室内画で、オルセー美術館が所蔵する。
画面の読み解き
館の解説によれば、場面はバジールがルノワールと分け合っていたアトリエである。中央でパレットを持つのがバジール自身で、父への手紙に、この姿はマネが「自分で描いた」と書いている。すらりとした姿には、たしかにマネの力強い筆づかいが見てとれる。帽子をかぶったマネは、画架の上の絵を眺めている。右でピアノに向かうのは、バジールの友人エドモン・メートルである。その上に掛かるモネの静物画は、バジールが作品を買ってモネを金銭的に助けていたことを思い出させる。左の3人は特定が難しく、モネ、ルノワール、ザカリー・アストリュクのいずれかとみられる。
技法・様式
キャンバスに油彩で描かれ、右下に「F. Bazille 1870」の署名と年記がある。館の解説によれば、マネとその崇拝者たちを囲む壁の絵は、サロンに落選した作品である。長椅子の上には《化粧》(モンペリエのファーブル美術館の作の下絵)、左上には《投網をうつ漁師》、窓の右には、1866年のサロンに落ちたルノワールの「二人の人物のいる風景」とみられる絵が掛かる。こうした画中画を選ぶことで、バジールはアカデミーへの批判と、自らの芸術観を示した。館の目録は、ほかにバジールの《エーグ=モルト》なども画中に描かれているとする。
来歴
館の記録によれば、バジールは1868年1月1日から1870年までこのアトリエを使った。本作は画家の兄弟マルク・バジールの収集にあり、1924年に彼の遺贈で国立美術館に入った。1925年からリュクサンブール美術館、1931年からルーヴル美術館、1947年からはジュ・ド・ポーム館で展示され、1986年にオルセー美術館に移った。1910年のサロン・ドートンヌ以来、50回を超えて展覧会に出品されている。所蔵番号はRF 2449。
意義
館によれば、グレールの画塾でモネ、ルノワール、シスレーと親しくなったバジールは、彼らとともにマネを敬っていた。本作は、のちの印象派の先駆けとなった画家たちの結びつきと親しさを伝える。数か月後、バジールは普仏戦争で戦死し、この絵は痛切な証言となった。