《コルトーナの受胎告知》
- 作者
- フラ・アンジェリコ
- 制作年
- 1434–1438年
- 素材
- 板 / テンペラ
- 寸法
- 175 × 180 cm
- 所蔵
- コルトーナ司教区美術館
- 時代
- ルネサンス
- 流派
- 初期ルネサンス
星をちりばめた青い天井の柱廊で、金の翼の天使ガブリエルが身をかがめ、聖母は胸の前で腕を交差させて言葉を受ける。二人の間には金の文字が走り、左奥の丘ではアダムとエヴァが楽園を追われる。
概要
《コルトーナの受胎告知》は、ドミニコ会の修道士で画家のフラ・アンジェリコが描いた受胎告知の祭壇画で、トスカーナ州コルトーナのコルトーナ司教区美術館が所蔵する。板にテンペラで描かれ、下部に裾絵(プレデッラ)を備える。トスカーナ州の観光公式サイトによれば、本作はコルトーナのサン・ドメニコ聖堂のために描かれ、同じ聖堂のための《聖母子と四聖人》の三連祭壇画、聖堂の入口の扉の上のルネッタ(半円形の壁画)とともに、画家がコルトーナのドミニコ会修道院に滞在していた1434年から1438年の間に制作された。美術館を運営するアレッツォ=コルトーナ=サンセポルクロ司教区は、館の主な収蔵品として最初に本作を挙げている。
画面の読み解き
画面では、細い円柱の並ぶ柱廊が、聖母の住まいの前に開いている。柱廊の天井は青く塗られ、金の星がちりばめられている。左では、金の翼を広げ、金の模様のある薔薇色の衣をまとった天使ガブリエルが身をかがめて進み出て、右手を上げて語りかける。右では、赤い衣に濃い青の外套をはおった聖母が腰掛け、膝の上に本を置き、胸の前で腕を交差させて天使の言葉を受け入れる。二人の間には、交わされる言葉が金の文字で記されている。柱廊の奥には赤い幕の下がる寝室の入口が見え、右の壁には金の錦が掛かる。上の柱の間の円形の枠には人物の胸像があり、聖母の上の壁には、光を放つ金の円が描かれている。柱廊の左には柵に囲まれた花咲く庭が広がり、その奥の丘では、天使に追われたアダムとエヴァが楽園を去っていく。司教区は、本作がルカによる福音書の受胎告知、すなわち天使ガブリエルが聖母に、神の子の母となることを告げ、聖母が「主のはしためです」と応えて救いを可能にした出来事を語るために描かれたと述べる。
技法・様式
トスカーナ州の観光公式サイトは、数年前に描かれたサン・ジョヴァンニ・ヴァルダルノの《受胎告知》では画家がマゾリーノに近いのに対し、本作にはマサッチョの教えが表れているとする。パラッツォ・ストロッツィの「ベアト・アンジェリコ」展(2025〜2026年)の報道資料によれば、受胎告知はアンジェリコの最も名高い主題の一つで、板絵や、フィレンツェのサン・マルコ修道院の壁画、多翼祭壇画の上部の区画に繰り返し描かれた。報道資料は、コルトーナとペルージャでの仕事(1437〜1438年)が、アンジェリコの画風が完全に成熟するうえで大きな意味を持ったとしている。
来歴
報道資料によれば、コルトーナのドミニコ会修道院は1391年に修道士ジョヴァンニ・ドミニチが創設したトスカーナで最初の厳修派の共同体で、フィエーゾレの修道士たちは1413年にここに移った。アンジェリコは1438年3月、コルトーナでサン・ドメニコ聖堂の礼拝堂の三連祭壇画の注文主である商人の遺言に立ち会っている。司教区によれば、本作はかつていくつもの場所に移されたのち、現在の司教区美術館に収められた。トスカーナ州の観光公式サイトと司教区によれば、美術館はかつてジェズ教会の洗礼堂だった大広間に、アンジェリコの2点の板絵を展示し、サン・ドメニコ聖堂のルネッタの下絵(シノピア)も収めている。本作は「信仰の年」の催しとして、教皇庁新福音化推進評議会がローマのボルゲーゼ美術館で企画した巨匠の作品の展示の最初の1点に選ばれて貸し出され、2013年2月に美術館に戻った。
意義
同じ主題のアンジェリコの板絵には、フィエーゾレのサン・ドメニコ聖堂のために1425〜1426年頃に描かれ、現在はプラド美術館にある《受胎告知》と、1440年頃の作でモンテカルロのフランシスコ会修道院から移されたサン・ジョヴァンニ・ヴァルダルノの《受胎告知》がある。司教区は2026年3月25日の受胎告知の祝日に、画家の没後570年を記念して、本作を読み解く夕べを美術館で催した。