《愛の勝利》
- 作者
- カラヴァッジョ
- 制作年
- 1601–1602年
- 素材
- キャンバス / 油絵具
- 寸法
- 156.5 × 113.3 cm
- 所蔵
- ベルリン絵画館 (369)
- 時代
- バロック・ロココ
- 流派
- イタリア・バロック絵画
暗い背景から、黒い翼の少年アモルが矢を手に笑いかける。白い布を掛けた台に片脚をかけ、足もとにはリュートとヴァイオリン、楽譜、直角定規とコンパス、甲冑、月桂樹の枝が散らばる。
概要
《愛の勝利》(羅: Amor vincit omnia、独: Amor als Sieger)は、イタリアの画家カラヴァッジョが1601年から1602年頃にローマで描いた油彩画で、ベルリン絵画館が所蔵する。縦156.5センチ、横113.3センチのキャンバス。所蔵館によれば、地上の愛の若い神アモルが、ウェルギリウスの『牧歌』の一句「愛はすべてに打ち勝つ」のとおり、学問や芸術、権力や名声に勝ち誇る姿を描いた寓意画である。
画面の読み解き
所蔵館によれば、自由学芸の道具と象徴、不朽の名声を表す月桂樹、武芸と戦の栄光を表す甲冑が、戦利品のようにアモルの足もとに散らばっている。左には楽譜とヴァイオリン、リュートの二つの弦楽器があり、その手前に幾何学の道具の直角定規とコンパスが置かれる。右脚の後ろには月桂樹に半ば隠れて、びっしりと書き込まれた開いた手稿と葦ペン、画面の右端には地上の支配と権力のしるしの王冠と笏がある。アモルは星をちりばめた青い天球に腰掛けているように見え、全世界への勝利と天文学を同時に示す。
技法・様式
所蔵館によれば、アモルは実際には天球の上ではなく、右へ布が垂れる台の縁に座っている。X線写真と浮き出た描き直しの跡(ペンティメント)から、この台の縁ははじめ人物の左側の輪郭より先まで続いていたが、画家が消して塗りつぶし、天球に置き換えたことが分かる。天球は最後に加えられたらしい。所蔵館は、不安定で挑発的なポーズをミケランジェロの彫刻《勝利》(フィレンツェ、ヴェッキオ宮殿)のもじりとし、アモルは庶民から選んだモデルをもとに描かれたと記す。集中させた光と強い明暗(キアロスクーロ)、自然への直接の取り組みは、1600年頃のローマの美術を一変させた画家の手法である。
来歴
所蔵館によれば、カラヴァッジョの最も重要な庇護者で、ローマで最も先進的な収集家だったヴィンチェンツォ・ジュスティニアーニ侯爵の旧蔵品である。ジュスティニアーニ家の収集は1815年、パリでプロイセン国王が一括して買い入れた。そこに含まれたカラヴァッジョの真作5点のうち、第二次世界大戦の直接の影響を免れたのは、ポツダムのサンスーシ宮殿の絵画館にある《聖トマスの不信》と本作の2点だけである。
意義
所蔵館によれば、少年の挑発的なポーズとあいまいな嘲るような笑みは、1638年のジュスティニアーニ家の目録にすでにうかがえ、1955年に美術史家ヴァルター・フリートレンダーが詳しく論じた解釈、すなわち地上の愛が人間の最も高い道徳的・知的価値と野心をあざ笑うという読み方を裏づける。同館の館案内によれば、侯爵の兄ベネデット・ジュスティニアーニ枢機卿のために、ジョヴァンニ・バリオーネは本作への応答として、甲冑をまとった天上の愛が地上の愛を打ち倒す絵を描いた。その作品も同館が所蔵する。