クレジット方針 収録範囲について お問い合わせ
作品COLLECTION 画家ARTISTS 流派MOVEMENTS 時代PERIODS 所蔵MUSEUMS 様式史HISTORY 用語集GLOSSARY 検索SEARCH

《賢明の寓意》

An Allegory of Prudence
《賢明の寓意》ティツィアーノ・ヴェチェッリオ
Wikimedia Commons / ロンドン・ナショナル・ギャラリー / Public domain 拡大して見る ⌕
PLATE
作者
ティツィアーノ・ヴェチェッリオ
制作年
1550年
素材
キャンバス / 油絵具
寸法
75.5 × 68.4 cm
広告

暗い地に、三つの男の顔が並ぶ。左に赤い帽子の白ひげの老人、中央に正面を向く黒ひげの男、右に横顔の若者。その下には狼、獅子、犬の頭が並び、上にはラテン語の銘が書かれている。

概要

《賢明の寓意》(英: An Allegory of Prudence)は、ヴェネツィアの画家ティツィアーノ・ヴェチェッリオが1550年頃に描いた油彩画である。縦75.5センチ、横68.4センチのキャンバスで、ロンドン・ナショナル・ギャラリーが所蔵する。老年・壮年・青年の三人の男の顔に、狼・獅子・犬の三つの頭を組み合わせた寓意画である。

画面の読み解き

所蔵館によれば、人生の異なる段階にある三人の男の頭部が、三つの動物の頭と対になっている。左では、赤い帽子をかぶった白いひげの老人が横顔で左を向き、その下に狼がいる。中央では黒いひげの壮年の男がこちらを正面から見つめ、その下に獅子が正面を向く。右では、赤みがかった巻き毛の若者が横顔で右を向き、その下の犬も右を向く。若者は白い襟をのぞかせ、赤い地に模様のある服を着ている。三つの顔は互いに重なるほど寄せられ、右からの光を受けた若者の顔が最も明るく、左の老人の顔は半ば影に沈む。動物の頭も顔の下に寄り集まり、中央の獅子のたてがみが左右の狼と犬の頭につながる。暗い背景の上部には、三つの頭に合わせて三つに分けたラテン語の銘があり、所蔵館の訳によれば「昨日に学び、今日は慎重にふるまう。その行いで明日を損なわぬように」という意味になる。

技法・様式

所蔵館によれば、構図は描く途中で大きく改められた。X線と赤外線反射撮影から、下には幅の広い襟をつけ、背を向けて左を見る別の人物が描かれていたことがわかり、左の老人の頭も途中で直されている。動物の頭は最後の段階で加えられ、かなり手早く描かれた。三つの顔の仕上げも一様ではなく、中央の顔が最も繊細で生気に富む。右の顔や動物に工房の助手の手をみる見方もあるが、所蔵館は、仕上げのむらはティツィアーノ自身にも珍しくなく、この風変わりで比較的簡単な構図に助手を使う理由は考えにくいとする。光は右から差し、右利きの画家には珍しいことから、特定の場所に掛けて遠くから見るために描かれたのかもしれない。

来歴

所蔵館によれば、1740年に没する前にパリの収集家ピエール・クロザの所有となり、タラール公を経て、1756年の売り立てで買われた。1814年までにリュシアン・ボナパルトのものとなり、1826年にはロンドンの画商サミュエル・ウッドバーンの手にあった。1828年より前に第4代アバディーン伯爵が手に入れて子孫に伝わり、1917年までにアルフレッド・ド・ロスチャイルドの所有となった。1918年にカーナヴォン伯爵夫人アルミナが相続して売り、1966年にベティとデヴィッド・ケッツァー夫妻が同館に寄贈した。所蔵番号はNG6376で、第14室に展示されている。

意義

所蔵館によれば、この絵の意味と目的は多くの議論を呼んできた。1556年にヴェネツィアで出たヴァレリアーノの『ヒエログリフィカ』は、犬と狼と獅子の三つの頭をもつ蛇を賢明の標章としており、本作は賢明の寓意かもしれない。ジョルジョーネの《テンペスタ》も収めていた収集家ガブリエーレ・ヴェンドラミンの小部屋の上部を飾る帯、肖像画の覆い、戸棚の扉として作られた可能性も挙げられている。三人をティツィアーノ本人と息子オラツィオ、甥のマルコ・ヴェチェッリオとみる説もあり、その場合は1560年代後半の作となるが、所蔵館は、年齢の釣り合いはよく合うものの、顔はあまり似ていないとする。