《東方三博士の礼拝》
丘をめぐり、崩れかけた白い石のアーチをくぐって、色とりどりの行列が馬小屋へ向かう。手前では三人の王がひざまずき、聖母の膝の幼子に贈り物を捧げる。小屋の屋根の上では、一羽の孔雀が羽を垂らしている。
概要
《東方三博士の礼拝》は、フラ・アンジェリコとフィリッポ・リッピが1440年から1460年頃に描いた円形画(トンド)である。ポプラ材の板にテンペラで描かれ、直径は137.3センチ。ワシントン・ナショナル・ギャラリーが所蔵する。所蔵館によれば、フィレンツェを治めたメディチ家が費用を出したと考えられ、おそらくコジモ・デ・メディチがフラ・アンジェリコに注文した。アンジェリコが描き始めて構図を決め、1455年に彼が没したのち、ライバルのフィリッポ・リッピが完成させたとみられる。
画面の読み解き
所蔵館によれば、三人の王は聖母と幼子キリストの前にひざまずき、それぞれ金の点を散らした光輪をつける。一人は幼子の足に触れ、赤い衣の一人は金の器を捧げる。赤い衣の飾りは、メディチ家の紋章の一つであるダチョウの羽に関わるのかもしれない。行列の人々の衣装と帽子は、東方から来たことを示す。行列は崩れかけた白い石のアーチをくぐり、その台の上には裸かそれに近い5人の人物が立つ。キリストの到来で終わった古代の異教を表すとも考えられる。小屋の屋根には楽園や不死を表す孔雀がとまり、右では猛禽が雉を襲う。幼子の膝の丸いものはザクロとみられ、無数の種は一つの信仰に結ばれた信者たちを表す。
技法・様式
所蔵館によれば、石の壁と草ぶきの屋根は降誕の場面を思わせるが、イタリア・ルネサンスの画家は、降誕と礼拝の図像をしばしば一つに重ねた。孔雀と2羽の鳥は、画面のほかの部分ができたあとに、リッピが描き加えたとみられる。牧草地に横たわる白い犬も、のちの書き加えかもしれない。行列は右上の山並みから画面を巡って手前の聖家族に至り、人々の多くは驚きと祈りの身ぶりを見せる。
来歴
所蔵館によれば、おそらくメディチ家の一員の注文で、ロレンツォ・デ・メディチに受け継がれた。1492年のロレンツォの没後に作られた財産目録には「ロレンツォの部屋」にあった「フラ・ジョヴァンニの手になる」大きな円形画として載り、館はこれを本作とみる。のちフィレンツェのグイチャルディーニ家に伝わり、1810年にボッティチェッリ作として売られた。19世紀のイギリスで持ち主を替え、1874年にリッチモンドのサー・フランシス・クックが手に入れた。1947年にサミュエル・H・クレス財団が購入し、1952年に同館へ寄贈された。所蔵番号1952.2.2。
意義
所蔵館によれば、本作はロレンツォ・デ・メディチの財産目録で、そのコレクションで最も高価な絵として記されている。今日では、世界に残るフィレンツェ・ルネサンス絵画の最高傑作のひとつである。メディチ家は東方三博士を祭る信徒会「コンパニア・デ・マギ」に属し、行列は毎年の公現祭の祭りの行進を映しているのかもしれない。