《女の戦い》
- 作者
- ホセ・デ・リベーラ
- 制作年
- 1636年
- 素材
- キャンバス / 油絵具
- 寸法
- 235 × 212 cm
- 所蔵
- プラド美術館
- 時代
- バロック・ロココ
- 流派
- スペイン・バロック絵画
柵の向こうに兵士や見物人がひしめく場で、オレンジの衣の女が盾を構えて剣を振り上げる。地面に倒れた相手の女は、首から血を流しながら赤い盾を掲げて見上げる。左では、甲冑の男がそれを見つめる。
概要
《女の戦い》(西: Combate de mujeres)は、ホセ・デ・リベーラが1636年に描いた油彩画である。縦235センチ、横212センチ。マドリードのプラド美術館が所蔵する。見物人の前で、剣と盾を手に二人の女が戦う場面を描く。所蔵館によれば、かつてはナポリで起きた女同士の決闘を描いたものとされたが、いまはマドリードのブエン・レティーロ宮殿のために描かれた、古代ローマの見世物の連作の一つとみられている。ナポリで活動したスペイン・バロック絵画の画家リベーラが、明るい色彩へ向かった時期の大作である。
画面の読み解き
画面の右では、オレンジの衣に藤色のマントをなびかせた女が、黒い丸い盾を構え、剣を振り上げて身をかがめる。所蔵館によれば、立っている女はすでに相手を打ち負かし、とどめを刺そうとしている。左下では、白と青の衣の女が地面に倒れ、首から胸へ血を流しながら、赤い盾を掲げて相手を見上げる。その手もとには剣が落ちている。左には古代ローマの軍装の男が立ち、二人を見守る。後ろの柵の向こうには兵士や市民の見物人がひしめき、斜めに立つ槍や鉾が画面を囲む。空は薄紅に染まり、奥には建物のアーチがかすむ。
技法・様式
所蔵館は、古典風の髪形とローマ風に流れる衣が、画面に古典の厳粛さを与え、構図を厳しく記念碑的なものにしているとする。1991年から1992年の修復で色彩の豊かさがよみがえり、とりわけ女たちの衣の明るいオレンジと優雅な藤色が際立つようになった。所蔵館によれば、この色づかいは、1630年代半ばからリベーラが16世紀のヴェネツィア絵画に関心を寄せていたことを示している。右下の隅には、黒で「Jusepe de Ribera valenciano, f. 1636(バレンシア人ホセ・デ・リベーラ作、1636年)」と署名と年記がある。
来歴
所蔵館によれば、プラド美術館の初期の目録は本作を、1552年にナポリ副王バスト侯の前で、美しい若者ファビオ・デ・セレソラをめぐって、ナポリの女性イサベラ・デ・カラツィとディアンブラ・デ・ペティネッラが行った決闘の場面としていた。しかし年代が合わず、背景の人物にも特定できる者がいないため、この説は疑われている。本作は1666年にマドリードのアルカサル(旧王宮)の目録に初めて現れ、1747年から1818年にかけては新王宮の各部屋にあった。所蔵番号P001124。
意義
女性の徳が宮廷の悪徳に勝つことを示す、対抗改革の寓意とみる説も出された。これに対して所蔵館は、ジョヴァンニ・ランフランコらの作品とともにブエン・レティーロ宮殿の装飾として注文された、古代ローマの見世物、とくに競技場の催しを描く歴史画の連作の一つとみる説が有力だとしている。殉教の場面の激しい明暗で知られるリベーラが、ヴェネツィア絵画にならう明るい色彩で古代の場面を描いた大作である。