《庭の女》
- 作者
- クロード・モネ
- 制作年
- 1867年
- 素材
- キャンバス / 油絵具
- 寸法
- 82 × 101 cm
- 所蔵
- エルミタージュ美術館
- 時代
- 写実・印象派
- 流派
- 印象派
クロード・モネが1867年、ノルマンディーのサン=タドレスにある親族の庭で描いた油彩画。日傘を差した白いドレスの女性と赤い花壇を、夏の強い日差しと青みを帯びた影の中にとらえた、印象派が生まれる直前の作品である。
概要
《庭の女》(仏: Jeanne-Marguerite Lecadre au jardin)は、フランスの画家クロード・モネが1867年に描いた油彩画である。ル・アーヴル近郊の海辺の町サン=タドレスにある親族の別荘の庭で、白いドレスに日傘を差した女性が、赤い花の咲く花壇と白いバラの木を眺めている。のちに印象派を率いるモネが、まだ20代で屋外の光の表現を探っていた時期の作品で、サンクトペテルブルクのエルミタージュ美術館が所蔵する。
来歴
モネは少年時代をル・アーヴルで過ごし、1867年の夏も同地の家族のもとに滞在していた。本作は、サン=タドレスにあったいとこのルカードル家の屋敷の庭で描かれ、モデルはいとこの妻ジャンヌ=マルグリット・ルカードルとされる。1879年の第4回印象派展に「庭」の題で出品された。同じ展覧会には、同じ庭を高い視点から見下ろした《サン=タドレスのテラス》も並んでいる。作品はルカードル家に残ったのち、1893年に画商デュラン=リュエルの手に渡り、1899年にモスクワの収集家ピョートル・シチューキンが購入した。1912年に弟セルゲイ・シチューキンの所有となり、ロシア革命後に国有化されて、国立新西洋美術館を経てエルミタージュ美術館に移された。
画面の読み解き
画面の左端に立つ女性は背を向け、顔はほとんど見えない。主役は人物よりも、中央の白い花をつけたバラの木と、その下に丸く広がる赤い花壇で、背後には濃い緑の木立と青い空が続く。芝生に落ちる影は黒ではなく青みを帯び、白いドレスも日なたは暖かく、陰の部分は空の色を映して青く見える。エルミタージュ美術館の研究者アルベルト・コステネーヴィチは、モネの関心は女性の性格や物語ではなく光のふるまいにあり、明るい部分を暖かく、影を冷たい青で描く、戸外の光の法則を見いだしたと述べている。X線調査では、女性の右側に塗りつぶされた男性の姿が見つかっている。
技法・様式
カンヴァスに油彩で描かれている。モネは、屋外でモチーフを前にして描く戸外制作を重んじ、アトリエで描く絵の茶色い影ではなく、自然光の中で実際に見える色を画面に置こうとした。一方、形はまだはっきりした輪郭で描かれ、筆触も細かく整っていて、のちの印象派の作品のように粗いタッチが画面全体を覆うには至っていない。同じ頃モネは、等身大の女性たちを屋外で描いた大作《庭の女たち》(1866年頃、オルセー美術館)にも取り組んだが、1867年のサロンで落選している。
意義
光と影、色の関係を屋外で確かめる本作の試みは、7年後の1874年に始まる印象派展へとつながっていく。花と庭は、ジヴェルニーの《睡蓮》に至るまで、モネが生涯描き続けた主題でもある。シチューキン兄弟らロシアの収集家がいち早く集めたフランス近代絵画の一つとして、エルミタージュ美術館では、旧参謀本部棟にあるシチューキンとモロゾフ兄弟の記念ギャラリーで展示されてきた。