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《天秤を持つ女》

Woman Holding a Balance
《天秤を持つ女》ヨハネス・フェルメール
Wikimedia Commons / ワシントン・ナショナル・ギャラリー / Public domain 拡大して見る ⌕
PLATE
作者
ヨハネス・フェルメール
制作年
1664年
素材
キャンバス / 油絵具
寸法
39.7 × 35.5 cm
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窓の光が差す部屋の隅で、毛皮の縁取りのある青い上着の女性が机の前に立ち、右手に天秤を下げて目を伏せる。机には真珠の首飾りと金の鎖、開いた箱が置かれ、背後の壁には最後の審判の絵が掛かる。

概要

《天秤を持つ女》は、オランダ・デルフトの画家ヨハネス・フェルメールが1664年頃に描いた油彩の風俗画で、ワシントン・ナショナル・ギャラリーが所蔵する。館の記録では、キャンバスに油彩で、描かれた画面は縦39.7センチ、横35.5センチ(木枠は縦42.5センチ、横38センチ)。所蔵番号は1942.9.97で、ワイドナー・コレクションとして1942年に館に入り、西館の50A室に展示されている。館は本作を、ありふれた主題を均衡と調和の像へと変えるフェルメールの光・色・構図の扱いを示す作品とし、世俗の財のはかなさと、節度と自制の必要を表すと解説している。

画面の読み解き

館の解説によれば、窓からの光が、手と袖と顔を照らして壁に広がり、壁の最後の審判の絵に届き、金と真珠の装身具の上できらめく。毛皮で縁取った青い上着の女性は、部屋の隅の机の前にひとり立ち、右手に空の天秤を下げて、目を伏せてその揺れが静まるのを待つ。机の上には青い布、開いた箱、二連の真珠の首飾りと金の鎖がある。窓の脇の壁には鏡が掛かる。背後の《最後の審判》では、威厳あるキリストが魂を裁き、女性の頭は、ふつう大天使ミカエルが魂を量る位置を隠している。キリストは女性の頭のすぐ上に現れ、彼女の日常のしぐさがその量ることと重ね合わされる。館は、女性は宝石以上のもの、すなわち自らの行いを量ることの大切さを考えているのかもしれないとする。かつては天秤の皿に金や真珠がのっていると考えられたが、顕微鏡での調査により、皿は窓の光を映しているだけで空だと分かった。

技法・様式

館によれば、線は女性の指先に集まり、天秤の支点は画面のちょうど中央にある。女性の手、装身具、机の面はピラミッドの形をなして天秤を囲む。フェルメールは効果のために形を変え、最後の審判の額の下辺を、女性の前では天秤の場所を空けるように高くした。真珠は、薄い灰色のグレーズの上に厚い一筆を置いて光らせ、天然のウルトラマリンや鉛錫黄など質のよい顔料を使い、青い上着では赤褐色の下塗りの上に薄い青を重ねて、冷たい青に温かみを持たせている。赤外線反射法では、画家が天秤の位置を動かし、大きくしたことが分かる。1994年の修復で変色したニスと、後世に四辺に約1.3センチ足されていた絵具が除かれ、最後の審判の額の金の輝きも取り戻された。

来歴

館の来歴によれば、本作はデルフトの後援者ピーテル・ファン・ライフェンとその一族が所有した可能性があり、1696年のアムステルダムでのディシウスの売り立てに出た。その後アムステルダムの収集家たちの手を経て、バイエルン王マクシミリアン1世の遺産として1826年にミュンヘンで売られた(このときはガブリエル・メツーの作とされた)。パリのカジミール・ペリエらの手を経て、1911年にフィラデルフィア近郊のピーター・A・B・ワイドナーが購入し、1942年にワイドナー家から館に寄贈された。

意義

館によれば、女性の穏やかな顔と青い衣は聖母の像を思わせ、腹部に落ちる金色の光から、身ごもっていると考える研究者もいる。天秤は、裁くことは量ることであるとして伝統的に正義を表し、真珠は虚栄と世俗の関心を、あるいは純潔を表す。館は、フェルメールの室内画が歴史画のような道徳的な重みを持つとし、本作が写実的であると同時に理想化された作品であると結んでいる。