《最後の晩餐》
- 作者
- ディルク・ボウツ
- 制作年
- 1464–1468年
- 素材
- 板(オーク材) / 油絵具
- 寸法
- 180 × 150 cm
- 所蔵
- ルーヴェンの聖ペテロ教会 (M Leuven のコレクション)
- 時代
- ルネサンス
- 流派
- 初期フランドル派
窓のある15世紀のルーヴェンの館の広間で、食卓の中央に座るキリストが右手を上げてパンを祝福し、使徒たちが静かに囲む。左右の翼には、旧約聖書の4つの場面が上下2段に描かれる。
概要
《最後の晩餐》は、ルーヴェンで活動した画家ディルク・ボウツが1464年から1468年に描いた油彩の三連祭壇画で、ベルギーのルーヴェンの聖ペテロ教会の聖体の礼拝堂にある。教会の美術品を管理するM Leuvenのコレクションに属し、フランドル美術コレクションの記事によれば、オーク材の板に描かれ、中央パネルは縦180センチ、横150センチ、両翼は縦約87.5センチ、横約70.5センチ。所蔵番号はS/58/B。artinflandersの解説によれば、本作は《聖エラスムスの殉教》を除けば、描かれてから600年近くたった今も、当初意図された場所に掛かり続けている唯一のフランドルの巨匠の作品である。
画面の読み解き
フランドル美術コレクションの記事によれば、聖体の信心を軸とした同信会のために、主題には、キリスト自身が聖体の秘跡を定めた最後の晩餐が選ばれた。両翼には、最後の晩餐を予告する旧約聖書の4つの場面、メルキゼデクがアブラハムにパンとぶどう酒を差し出す場面、ユダヤの過越の食事、マナを集める場面、天使に養われる預言者エリヤが描かれ、旧約と新約が結びつけられている。目を引くのはその舞台で、ボウツはキリストの最後の食事を15世紀のルーヴェンの典型的な富裕な市民の家の中に置いた。左の窓からは、当時まだ建設中だったルーヴェンの市庁舎さえ見える。artinflandersによれば、最も大切な瞬間であるパンを祝福するキリストの手が、画面の中心の焦点になっている。
技法・様式
フランドル美術コレクションによれば、中央パネルでは数学的な遠近法が一貫して用いられ、すべての線がキリストの背後の暖炉の楣の一点に集まる。平らな面に三次元を正確に表そうとする試みはボウツの絶えざる追求であり、本作は北方の絵画で科学的・数学的な遠近法が使われ始めたことを示す。artinflandersによれば、ボウツの作品の常として、人物たちはほとんど動かない役者のように、感情を表さず静かにたたずみ、この作風からボウツは「沈黙の画家」と呼ばれた。M Leuvenは2024年の展覧会「アトリエ・ボウツ」で、新しい層序分析によって本作を最も細かな絵具の層まで調べた成果を紹介した。
来歴
フランドル美術コレクションによれば、日常の暮らしの中での信仰を説く「新しい信心」の精神のもと、聖体の同信会が1432年にルーヴェンに設立され、町の主要な教会である聖ペテロ教会に二つの礼拝堂を持った。同信会は一方の礼拝堂のためにボウツに《聖エラスムスの殉教》を注文し、もう一方のために本作を注文した。画家の年譜によれば、契約は1464年3月15日に結ばれた。典礼に用いられ聖体の信心を促すための絵だったため、ボウツはルーヴェン大学の二人の神学者、ヨハネス・ファーレナッケルとエギディウス・バイユーウェルの助言を受けて構想を練り、完成までほかの注文を受けないよう求められた。作品は1468年2月9日より前に完成した。
意義
フランドル美術コレクションによれば、レオナルド・ダ・ヴィンチの名高い最後の晩餐が描かれる前のことで、ボウツは手本の無い中でこの場面を大画面に描いた最初の画家となった。聖書の場面を今ここに移す同時代の舞台は、見る者の世界と描かれた出来事の距離を縮め、信者がキリストの生涯と苦しみに共感しやすくした。本作は、この地域のルネサンス美術の鍵となる作品と位置づけられている。