《3人の音楽家》
- 作者
- ディエゴ・ベラスケス
- 制作年
- 1616–1618年
- 素材
- キャンバス / 油絵具
- 寸法
- 90.4 × 113.2 cm
- 所蔵
- ベルリン絵画館
- 時代
- バロック・ロココ
- 流派
- スペイン・バロック絵画
暗い部屋で、ギターを弾く男が目を上げて口を大きく開けて歌い、黄色い服の若者がヴァイオリンを奏でる。手前では少年がグラスを手にこちらへ笑いかけ、その陰で梨を持った猿が前を見つめる。
概要
《3人の音楽家》は、スペインの画家ディエゴ・ベラスケスが1616年から1618年にセビーリャで描いた油彩の風俗画で、ベルリン絵画館が所蔵する。館の記録では、キャンバスに油彩で、画面は縦90.4センチ、横113.2センチ。所蔵番号は413Fで、館は1906年にロンドンの R・ラングトン・ダグラスの収集から買い入れた。館の解説によれば、同じ構図の作品は5つの版が伝わり、ベルリンの本作は最も質が高いとされる。
画面の読み解き
館の解説(スヴェン・ヤクシュタット執筆)によれば、三人の若い音楽家が、つましく整えられた卓を囲んで狭く暗い部屋にひしめいている。光と影で力強く肉づけされた顔が、背後の暗い灰色の壁からくっきり浮かび上がる。卓の前に立つ少年は、縁までなみなみと注いだグラスを左手に持っていたずらっぽく笑い、仲間の演奏に耳を傾けるよう見る人を誘う。卓の向こうの男は口を大きく開け、恍惚と目を上に向けてギターに合わせて歌い、同じ年頃のヴァイオリン弾きがそれに合わせようとする。緑の卓布の上には、きちんと畳んだ白いナプキンにのった丸パンと、その下の銀の皿、ナイフ、ナイフを突き立てた平たい丸い箱、半分ほど満たした漏斗形のグラスが静物画のように並ぶ。少年の左後ろには梨を持った猿がうずくまり、少年をまねて画面の外を見ている。
技法・様式
館の解説によれば、1623年にマドリードの宮廷画家となる前、ベラスケスはセビーリャで、静物の要素を含む風俗画「ボデゴン」を数多く描いた。師で岳父でもあるフランシスコ・パチェーコは、低く見られがちなこの分野での弟子の並外れた腕前をたたえ、古代の絵画の伝統に連なるものとした。光の向きが一様でなく、空間の組み立てにも食い違いがあるため、本作がベラスケス自身の手によるかは疑われたこともある。一方で、まさにそれが、パチェーコの工房での修業中に描かれた、現存する最も早い作品の一つである証だとみる研究者もいる。
来歴
館の記録によれば、本作は1906年に、ロンドンの R・ラングトン・ダグラスの収集から購入されて館に入った。館の解説は、同じ「3人の音楽家」が5つの版で伝わることを、当時ボデゴンがどれほど人気を集めていたかの証としている。
意義
館の解説によれば、一見すると、簡素な居酒屋「ボデガ」で客をもてなす音楽家たちの日常の場面に見えるが、よく見るとひとつの解釈にはおさまらない。壁の額の中の風景画は豊かな室内をうかがわせ、画中画として画家自身の仕事を主題にする。猿と少年の挑むような視線は「見る」ことを、演奏は「聞く」ことを、卓上の品の正確な描写は「触れる」ことを、パンと飲み物は「味わう」「嗅ぐ」ことを呼び起こし、五感の寓意とも読める。一方で、果物を食べる猿は人の卑しい本能の象徴で、熱のこもった演奏は過度の飲酒のせいとも考えられ、道徳的な戒めとする読みも否定できない。館は、慣習にとらわれないこの新しい主題が、若いベラスケスに腕前と創意を示す機会を与えたことは確かだと結んでいる。