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《奴隷船》

Slave Ship (Slavers Throwing Overboard the Dead and Dying, Typhoon Coming On)
《奴隷船》ジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナー
Wikimedia Commons / ボストン美術館 / Public domain 拡大して見る ⌕
PLATE
作者
ジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナー
制作年
1840年
素材
キャンバス / 油絵具
寸法
90.8 × 122.6 cm
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赤と黄に燃える夕空の下、荒れた海の向こうを帆船が嵐へ向かって進む。手前の波間には、鎖につながれた足や手が沈みかけ、魚や海鳥がそのまわりに群がる。画面の中央には、沈む日の光がまっすぐ海に落ちる。

概要

《奴隷船》(英: Slave Ship (Slavers Throwing Overboard the Dead and Dying, Typhoon Coming On))は、イギリスの画家ジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナーが1840年に発表した油彩画である。縦90.8センチ、横122.6センチ。嵐の迫る海で、奴隷船の乗組員が死者や瀕死の人々を海へ投げ捨てる場面を描く。ボストン美術館が所蔵する。

画面の読み解き

画面の大半を、赤や黄に燃える夕空と荒れる海が占める。左奥では帆船が、迫る嵐に向かって傾きながら進む。手前の波間には、鎖のついた足や手がのぞき、魚や海鳥がそのまわりに群がる。中央には沈む日の光がまっすぐ海に落ち、空と波の色が溶け合う。左の空には暗い嵐の雲が垂れこめ、右の空は白く明るい。ランカスター大学のラスキン旧蔵品の解説によれば、1840年の展覧会の目録には、ターナー自作の未刊の詩の一節が添えられた。「総員、上檣を下ろせ。怒れる夕日と鋭い雲が嵐の来襲を告げる。その前に甲板を払え、死者と瀕死の者を海へ投げ込め、鎖など構うな。希望よ、欺きの希望よ、お前の市場は今どこにある」。

技法・様式

キャンバスに油彩で描かれる。ボストン美術館の報道資料によれば、ターナーの光と色の探究は比類なく、その筆づかいは1870年代の印象派のゆるやかな筆触や、1940〜50年代の抽象表現主義の身ぶりのある描き方を数十年先取りしていた。英語版ウィキペディアによれば、人物や物よりも自然に重きを置くことで、エドマンド・バークの説いた崇高の考えを呼び起こしている。ラスキン旧蔵品の解説によれば、その様式と強烈な色は、発表当時の新聞で嘲笑の的となった。

来歴

ラスキン旧蔵品の解説によれば、本作は1840年のロイヤル・アカデミー展に出品されたが売れなかった。批評家ジョン・ラスキンが手に入れたがっているのを知った父ジョン・ジェイムズが、ひそかに250ギニーで買い、1844年の元日に息子へ贈った。ラスキンはのちに、この痛ましい主題とともに暮らすのはつらいと述べ、1872年にアメリカへ売った。ボストンのアリス・フーパーらを経て、1899年にボストン美術館がヘンリー・リリー・ピアース基金で購入した。所蔵番号は99.22。

意義

ボストン美術館は、本作を大西洋の奴隷貿易への痛烈な告発とし、2022年の展覧会でも中心に据えた。19世紀の初めまでに、イギリスの船は推定310万人の奴隷とされた人々をアフリカからカリブ海や南北アメリカへ運んでいた。同館によれば、本作は、1781年に病の広がった奴隷船ゾング号の乗組員が、海で「失われた」者の保険金を得るため、133人の捕らわれた人々を海に投げ込んで溺れさせた悪名高い事件に着想を得たとみられる。